仙台市が救急病床確保で31病院と連携するモデル事業開始

仙台市は2日、市内31病院と連携して急性期を脱した患者の早期転院を促し、救急患者向けの病床を確保するモデル事業に乗り出す。病院間の連絡調整システムの統一化、転院先の病院への補助金交付などを通じ、病床不足で救急患者の受け入れ先が決まらない状況を減らすのが狙い。2025年度の本格実施を見据える。

連絡システム統一、補助金交付 転院調整をスムーズに

 急性期患者を積極的に受け入れる11救急病院、容体が安定した患者を引き受ける14支援病院、両方を担う6病院に分けて事業を展開する。患者の容体や受け入れ可否の情報をクラウドで共有するシステムを導入し、転院調整を効率化する。

 市医療政策課によると、現在は各病院で手順や書式が異なり、1例ごとに電話やファクスでやりとりしている。決定まで約2週間かかったり、関係が深い病院に偏ったりする課題がある。デジタル化で期間短縮や業務負担軽減の効果が出るかどうかを検証する。

 20年の全国調査によると、65歳以上の入院日数は40・3日で、35~64歳の1・7倍長い。こうした現状を受け、入院が長引く傾向がある65歳以上の患者を引き受けた支援病院には、市が補助金を支給する。最初の入院から5日以内は3万円、15日以内は1万円。本年度の事業費は約3000万円を計上し、政令市では初の試みという。

 モデル事業に乗り出す背景には救急の逼迫(ひっぱく)がある。市の22年度の調査では、病院が救急車を断った主な理由(複数回答)は「空き病床がない」が41・7%。「専門医の不在」などに次いで3番目に多かった。救急車を受け入れた割合を示す応需率は、コロナ禍前の19年の69・2%から、23年は54・1%まで急降下している。

 郡和子市長は8月27日の定例記者会見で「高齢化の進展で需要が伸びる一方、労働人口は減る。安定した救急医療体制を確保するため、市民は転院に協力してほしい」と呼びかけた。

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