仙台市は9日、4月1日時点の保育施設の待機児童が2年連続でゼロになったと発表した。施設の定員増や1歳児の受け入れ枠拡大を進め、入所希望者の増加に応えた。一方、希望する保育施設に入れないケースなどが当てはまる「隠れ待機児童」は539人で、4年ぶりに増加に転じた。
待機児童が全国の市町村で最多の740人だった2008年以降の待機児童数と入所希望者数はグラフの通り。
「ミスマッチ」の解消には至らず
市は4月時点で、認可保育所や認定こども園、小規模保育事業所といった保育施設を前年と同じ421カ所、定員は203人増の2万2447人をそれぞれ確保した。入所した子どもは2万1926人で242人多かったが、定員の拡充で増加分をカバーした。
待機児童は1989年の政令市移行後初めて解消された22年と同様にゼロ。隠れ待機児童は22年まで3年連続で前年を下回ったが、23年は111人増えた。
市は隠れ待機の増加要因として、入所希望者数が前年を353人上回った点を挙げる。就学前の子どもが減少する中、保護者の保育ニーズは依然高いという。
隠れ待機児童のうち、他に入所可能な施設があっても特定の保育施設を希望するケースが223人と4割を占める。保護者が自宅や職場からの近さを重視するためとみられる。市全体の欠員数は1475人と前年から57人減ったが、ニーズと乖離(かいり)する「ミスマッチ」の解消に至っていない。
市が20年にまとめた推計によると、入所希望者数は23年にピークを迎える。市は保育施設の新設を抑制しながら、既存施設を有効に活用してミスマッチを解消したい考え。保護者への聞き取りや相談対応といったソフト対策も強化する。
郡和子市長は9日の定例記者会見で「待機児童ゼロはとても喜ばしい。(隠れ待機児童を)一人でも減らす努力を今後もしなくてはいけない」と述べた。