仙台市エコモデルタウン赤字続きで幕 固定資産税、民間にずしり

仙台市は、情報通信技術(ICT)を活用して災害に強い省エネ型の都市を目指す「エコモデルタウン推進事業」を2022年度で終了した。国から約23億円の補助金などを受け、14年度に運用が始まった官民連携による東日本大震災からの復興事業の目玉の一つ。だが、事業収入の割に負担の重い固定資産税が、事業継続の壁となった。(報道部・高橋葵)

田子西災害公営住宅に設置された太陽光パネルを指さす加藤代表理事

田子西災害住宅 電力使用伸びず

 176戸からなる宮城野区の田子西災害公営住宅の屋根に、216枚の太陽光パネルが輝く。タブレット端末が各家庭に配布され、自宅の電気使用量を見ることができる。

 田子西町内会の川名清会長(74)は「入居者は高齢者が多く、タブレット端末を使っている人はほとんどいない。ここがモデル地区として適していたのか疑問がある」と首をかしげる。

 事業は、市震災復興計画(11~15年度)のプロジェクトの一つ。太陽光発電と大型の蓄電池などを組み合わせた災害時の電力の安定供給、タブレット端末に届く電力需要予測を参考にしたデータの収集を目的に始まった。

 運営は、市の公募で選ばれた国際航業(東京)など3社で組織する一般社団法人「仙台グリーン・コミュニティ推進協議会」が担った。市が国の補助金の採択を受け、運営法人が施設を整備。推進協は「公的事業なので固定資産税は市負担もしくは減免」と捉えて計画を立てたが、市に支払いを求められた。

 運営費は、安価に一括購入した電力を災害公営住宅に売電して、その差額などで賄う想定だった。しかし、入居者は1人暮らしや高齢者が多いため電力使用量が伸びず、収益は年400万円ほどにとどまった。固定資産税の支払額は9年間で計6000万円以上に達し、毎年の赤字分は3社からの寄付金で穴埋めした。

収益確保の見通し甘く

 同協議会の加藤清也代表理事(59)は「膨大な固定資産税を負担することになるとは思わなかった。市とも掛け合ったが、所有者が負担すべきだと説明された」と語る。途中で事業を停止すると補助金の全額返金を求められるので、続けざるを得なかったという。

 今後、住民に配られたタブレット端末は機種が古くなったため廃棄される。太陽光パネルは市が無償譲渡を受け、余剰分は他の指定避難所などに運び再利用する予定。

 23億円もの税金を投入しながら事業が軌道に乗らなかった理由について、市地球温暖化対策推進課の担当者は「大規模な設備を導入したため固定資産税などの負担が重く、採算が取れなかった」と説明。収益確保の仕組みが欠けていた点を認めた。

 市は、災害公営住宅の配電設備を通常の仕様に戻すための工事費として23年度予算に6453万円を計上した。工事は今秋を予定する。

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