仙台市バス、不採算路線廃止へ 計画素案を公表

仙台市交通局は市バス・地下鉄事業の経営指針「交通事業経営計画」(2021~30年度)の素案を公表した。バスは13年連続の赤字を踏まえ、利用者の少ない不採算路線を廃止し、地域交通に置き換える。運賃の全体的な見直しにも踏み切る。地下鉄は東西線を中心に、沿線のまちづくりと連動させた利用促進策を展開する。
 素案によると、大半が赤字のバスは採算性が極めて悪い区域に関し、路線の廃止や縮小、便数調整などを行い、運行効率を向上させる。地域住民の足は、デマンド型の地域交通などに置き換えて確保する。
 運賃は引き上げを含めて改定を検討する。消費税増税に伴う値上げのほか、18年10月に市中心部の初乗りを引き下げ、均一運賃「100円パッ区」を引き上げた以外、1995年から実質据え置いている運賃の全面改定も視野に入れる。
 財政目標は「資金不足比率20%未満」を設定する。2019年度決算は4.3%にとどまるが、このまま現在の路線や運賃水準などを維持したとすると、30年度に58.3%と劇的に悪化することが懸念される。
 素案には、仮に26年度に運賃水準を7%(4億円相当)引き上げた場合、目標範囲内の18.1%に抑制できるとの試算も掲載した。
 一方、地下鉄は今後も人口増加が続くと見込まれる東西線沿線、マンション開発が進む南北線の南部エリアで乗客増を目指す。交通手段の予約から決済までを一括してスマートフォンで行える「MaaS」の広がりなどを利用につなげる。
 運賃は南北線は1996年、東西線は開業以来、消費税増税時を除き、実質据え置いているが、今後の収支動向も見据え、見直しの必要性や時期を検討する。
 地下鉄事業は東西線建設に伴う企業債の償還などがあり、2016年度から単年度赤字が続く。経営計画に基づく収益改善と費用抑制で、22年度に黒字転換することを目標に据える。
 素案は新型コロナウイルスの影響にも言及した。バス、地下鉄とも20年度の利用客は前年度の7割程度にとどまる見通しだが、既に回復基調にあり、25年度まで5年かけて「コロナ前」水準に戻ると予想する。

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