仙台市は新年度、地下鉄東西線の需要予測の見直しに着手する。「1日12万人弱」とした数値をめぐっては、市民から「多すぎて実態に合っていない」との指摘もある。開業を予定する2015年の人口は、03年当時の想定より減少する見通し。市が需要予測を下方修正する可能性が高まっている。
需要予測の見直しは、国土交通省の要領に基づく事業再評価の一環で行う。市は、評価基準となる費用と効果の比率「費用便益比」を算定するため、将来人口の推計値などを基に開業後の1日の利用者数を再計算する。
現行の需要予測である1日11万9000人は03年、開業時の人口を107万6000人と設定してはじき出した。市は「南北線の実績と比べても妥当な数字。地下鉄整備と一体で街づくりを進めており、十分に達成できる」と胸を張っていた。
8年たって状況は変わった。市が1月、10年国勢調査の速報値を基に将来人口を再計算したところ、15年の推計値は105万846人にとどまることが判明した。
伸び率は予想を大きく下回り、最近は「開業時に需要予測を達成するのは難しい。下方修正せざるを得ないのではないか」(市幹部)との見方が広がっている。
東西線と同じリニアモーター式で、05年に運行を始めた福岡市地下鉄七隈(ななくま)線は、1日の平均利用者が6万1000人(09年度決算値)。需要予測の11万人を大きく下回る。
福岡市交通局の担当者は「市民が中心部の集合住宅に移住し、地下鉄を使わないライフスタイルが広がった。自転車の利用者が増えたのも誤算だった」と説明。同市は、累積赤字の解消時期を26年度から69年度へ先送りすることを決めた。
鉄道整備で郊外の沿線開発を促し、利用人口を増やして営業収入を確保するのが従来の「鉄道建設の方程式」。成熟した人口減少社会の到来で、手法の修正は避けられない情勢だ。
地下鉄建設に反対する市民グループ「美しい仙台を創る会」の河村直人代表は七隈線の苦境を踏まえ、「11万9000人の達成はあり得ない。住民の動態調査を見ても、せいぜい6万人程度にとどまるのではないか」と推測する。
仙台市交通局は「仙台駅まで運行している直通バスを東西線の主要駅に結節させる。バスを持たない福岡市と違い、仙台はバス路線再編で利用者を地下鉄に誘導できる」と説明する。
総事業費(2735億円)を300億円程度圧縮する方針を決めていることも挙げ「万が一、需要が落ちても費用便益比が大きく下がることはないと思う」と話している。