仙台市は16日、市役所で開いた震災復興検討会議(議長・鎌田宏仙台商工会議所会頭)の第4回会合で、震災復興計画の中間案を示した。東部沿岸地域の集団移転は津波浸水シミュレーションを基に、海岸沿いを南北に走る県道塩釜亘理線の東側など最大約2400世帯を対象に設定。宮城野区白鳥地区の最大約1200世帯についても、2階以上の階に居室を設けるといった緩やかな建築制限を講じる方針。
東部沿岸地域の再建は塩釜亘理線を現在の位置で6メートルかさ上げし、防潮堤や海岸防災林、避難道路の整備による多重防御で津波の減災を図る。集団移転先は内陸部の若林区荒井と下飯田、宮城野区田子のほか、宮城野区岡田など3カ所を新たな候補に加えた。
移転を終えた地区は、仙台東部道路より東側の農地とともに「農と食のフロンティアゾーン」と位置付け、6次産業化などニーズに応じた力強い農業に再構築する。
復興のシンボル事業として、10項目の「100万人の復興プロジェクト」も盛り込まれた。
この日の協議で、東北大の風間基樹教授(地盤工学)は県道のかさ上げについて「数百年に一度の津波への対策と、地域が分断されるなどのデメリットとのバランスが取れているかどうか」と疑問視。宮城大の宮原育子教授(地域資源論)は「3月11日に、電気もガスも水もない時間を過ごした市民生活の中から、仙台モデルを作る工夫が必要だ」と提言した。
震災復興計画は市議会9月定例会での議論を踏まえ、10月末の決定を目指しているが、策定作業は遅れている。集団移転の説明に時間を要することから、半月程度ずれ込むとの見方も出ている。
◇仙台市震災復興計画中間案の骨子
・「新次元の防災・環境都市」が復興の基本理念。計画期間は2015年度までの5年間。
・東部地域は海岸沿いの県道を盛り土し「第2の防波堤」に。津波の深さ2メートル超と予想される地区の住宅は集団移転を基本に据える。
・丘陵部で多発した被災宅地の再建は、国に支援制度の拡充を強力に要請。必要に応じて集団移転や市独自の制度創設を検討する。
・大都市での震災の教訓を生かし、避難所運営や防災教育で「仙台モデル」を構築する。
・省エネルギー型のエコモデルタウン、次世代エネルギーの研究開発拠点を形成する。
・仙台港地区は復興特区制度を活用し、被災企業の支援と成長産業の集積を図る。