仙台市教委、給食牛乳を5月17日再開へ 体調不良問題で対策、校長ら3人で検食

宮城県内の小中学校で東北森永乳業(仙台市宮城野区)が製造した給食のパック牛乳を飲んだ児童生徒が体調不良を訴えた問題で、仙台市教委は13日、見合わせていた牛乳の提供を17日に再開すると発表した。市保健所や同社による検査の結果、製造工程や製品に異常が確認されず、市教委と同社が当面の安全対策を追加することで再開できると判断した。

 対象となるのは、同社が本年度供給する市立小中高など135校で、市全体の約7割に当たる。市教委は各校に対しておおむね1カ月間、校長らが行う「検食」について、牛乳に限って職員2人を加えた3人体制での実施を通知。不安を感じる場合、保護者の申し出で飲まなくてもいい対応を取る。

牛乳を製造する東北森永乳業仙台工場=仙台市宮城野区

[検食]学校給食法に基づき、児童生徒が給食を取る時間の30分前までに学校の責任者が事前に食べる。献立の中に(1)人体に有害と思われる異物の混入(2)食品の異味異臭(3)食品の量が適当か-などを確認する。検食した時間や検食者の意見を記録する。

 同社は(1)風味検査のサンプル数を2倍にする(2)専門職員による風味検査を出荷前に毎回行う(3)検査サンプル用として配送車に余剰分を積み込む-といった措置を講じるとしている。

 市教委健康教育課の加藤誠課長は「原因が特定されるのが望ましいが、他の事例を踏まえて原因が分からないケースがほとんど」と説明。「事業者や学校で風味の確認体制を強化するので、理解してもらいたい」と話した。

 森永乳業(東京)の担当者は「ご迷惑をおかけし、おわび申し上げる。品質管理を徹底強化し、お客さまに安心してもらえるよう商品作りに努める」と話した。

 市教委によると、東北森永乳業が4月24日に製造した牛乳は翌25日、市立小中高など133校に給食用として提供された。うち小中73校の計574人が嘔吐(おうと)や腹痛の症状を訴え、26日から提供を中止していた。

 25日には仙台を含む県内12市町の公立学校と一部県立学校に提供され、河北新報の集計では、体調不良者は計1062人に上った。

宮城の市町教委「安全分からず再開困難」 仙台以外、慎重姿勢も

 宮城県内の小中学校で、東北森永乳業(仙台市宮城野区)が製造した給食のパック牛乳を飲んだ児童生徒が体調不良を訴えた問題で、仙台市教委が牛乳の提供を再開すると発表した13日、同社の牛乳を扱う他の市町教委も再開の検討を始めた。原因は依然不明のため、慎重に判断する市町教委も目立つ。

 仙台市以外で東北森永乳業製のパック牛乳が出されていたのは塩釜、名取、角田、多賀城、岩沼、丸森、亘理、山元、松島、七ケ浜、利府の11市町。

 仙台市教委と同様に17日からの再開を検討しているのは七ケ浜町教委のみ。岩沼市教委は20日以降、角田市教委は27日からの提供を模索する。残り8市町教委は「未定」としている。

 多賀城市教委は14日、同社から説明を受ける予定。教育総務課の担当者は「仙台市が再開しても安全性が証明されないまま提供するのは難しい。森永側の話を聞いた上で対応を決めたい」と話した。

 カルシウム不足などを補うため岩沼、丸森両教委は飲むヨーグルトを提供し、塩釜や名取など6市町教委も代替品を出す予定。代替品を提供する時期が終わるまでに、牛乳を出すかどうかを決める教委もある。

 仙台市保健所や同社の調べでは、製造工程や製品に異常が確認されていない。原因が特定されないにもかかわらず、約3週間で再開に踏み切った仙台市教委の姿勢に疑問の声も上がる。

 ある教委の担当者は「仙台市保健所からも森永からも何も説明がない。本当に大丈夫なのかという不安はある」と漏らした。

 定時制高校など県立学校15校も同社の牛乳を提供していた。仙台市教委が再開を発表した13日、県教委は情報の収集に追われた。県教委保健体育安全課は同日夕、各校に市教委の発表内容を伝えた。担当者は「現場の教諭や保護者らの考えを踏まえた上で、どうするかを判断することになるだろう」と述べた。

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