仙台弁「いずい」を逆手にアパレルブランド 希少難病患う村田さんがデザイン

仙台弁の「いずい」を欧文でロゴマークにしたアパレルブランド、その名も「SENDAI IZUI&Go.」が今春スタートした。立ち上げたのは、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)という希少難病を患う仙台市若林区の村田小栄子さん(55)。闘病生活で何度も感じてきた「いずい」を逆手に取って、あえてブランド名に冠した願いとは。
(せんだい情報部・大泉大介)

支え合う「魔法の言葉」

 商品は現状、Tシャツとトートバッグの2種。どちらも黒地にシルバーで大きく「IZUI」のロゴマークを配す。

 村田さんが自らデザインし、市内の印刷会社にプリントを委託する。自社サイトで販売し、TシャツはS~2Lが5500円(3・4Lは6000円)、トートバッグは5500円だ。

 「IZUIって何ですか?」「方言でしたっけ?」

 ロゴを目にした人がそんな反応を示すことを願ってデザインした、と村田さんは明かす。

 「いずいは平たく言うと、ちょっと困った状態のこと。誰もが気軽に『いずい』と言い合え、そこから助け合いが生まれる。そんな温かな社会を作る一助になればいい」と込めた思いを語る。

 異色のブランドを作った背景には自身の病苦がある。生まれ育った仙台にある東京の大手印刷会社の支店勤務を経て、大阪の広告代理店で仕事に燃えていた30代半ば、体に異変を感じた。極度に疲れやすくなり、階段の昇降が困難に。職場では座っていられず、休憩室で横になるようになった。

 病院を巡って原因を探るも、診断は「異常なし」ばかり。職場は退職せざるを得ず、一時はほぼ寝たきりになった。

 「死にたいと思うほどしんどくても、周囲には怠けていると見えてしまう。病苦よりも世間の無理解や偏見、社会的つながりを失ったことがつらかった」

 長年の闘病に変化が訪れたのは2019年。治験に応募し、ME/CFSと判明した。原因不明、治療法なしの病と分かったことで、自身の使命を「誰も孤立しない世の中を作ること」と思い定めた。

 一進一退の体調の中で23年秋、かねて人と人とをつなぐ不思議な力があると感じていた「いずい」をキーワードにブランドを作ることを着想。友人の助けを借りながら今年1月、販売開始までこぎ着けた。

 これまでTシャツ80枚、バッグ20枚が売れた。購入者が身に着けた姿などを交流サイト(SNS)にアップしてくれていて、ブランド趣旨の浸透や病気の理解にもつながっている。

 村田さんは「いずいは助け合いを広める魔法の言葉にもなり得る。多くの人に知ってもらい、世界をつなぐ言葉にしたい」と意気込む。

 連絡先はsendaiizui2024@gmail.com

激しい倦怠感で孤立も 慢性疲労症候群

 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は健康だった人が突然原因不明の激しい全身倦怠(けんたい)感に襲われる疾患。強度の疲労感とともに、微熱や頭痛・筋肉痛、思考力の低下などが長期間続くため、通常の社会生活が送りにくくなり、重症化すると外出不能や寝たきりになる。

 一般的な検査では異常が見つからず、発見や治療が遅れるケースもある。患者の約3割は寝たきりかそれに近い状態で介護を要するが、専門医がほとんどいない上、治療法も確立していない。病状の深刻さに加え、周囲に理解されない社会的孤立が患者を一層苦しめているとの指摘がある。

 1988年に米国疾病対策センター(CDC)が症例を報告。それ以降、世界各国で確認され、病態の解明や診断、治療法の開発が進められている。日本国内の有病率は0・1~0・3%との研究がある。

 5月12日は、ME/CFSを患ったとされるフローレンス・ナイチンゲール(1820~1910年)の誕生日にちなみ、ME/CFSの世界啓発デーになっている。世界各地でランドマークのライトアップが行われ、国内では青森県観光物産館アスパム(青森市)や大阪城(大阪市)などがテーマカラーのブルーで照らされる。

タイトルとURLをコピーしました