2017年に仙台市で開かれる国内最高峰の和牛品評会「第11回全国和牛能力共進会(全共)宮城大会」に向け、宮城の畜産界が初の日本一獲得へ燃えている。地元開催は長年の悲願。東日本大震災からの本格復興と、「仙台牛」のブランド向上に寄せる期待は大きい。新たな基幹種雄牛の選定、交配開始など、3年後を見据えた取り組みが動きだした。
「和牛のオリンピック」と言われる全共は5年に1度、各地の選抜牛が一堂に会する。東北では福島(1982年)、岩手(97年)に続き3回目。全農みやぎ畜産部(美里町)の安部俊也次長は「和牛の主産地として認められた証し。生産者の夢だった」と話す。
県や農協などでつくる実行委員会は、日本一に当たる「首席」の優等賞1席を、種牛と肉牛両部の出品区で一つずつ取る目標を掲げた。これまで宮城の最高成績は優等賞3席。飼育頭数が宮城の3~4倍の宮崎、鹿児島両県など、九州勢が占める上位への進出を狙う。
鍵を握るのが基幹種雄牛だ。宮城には全国的に評価が高い父牛「茂洋(しげひろ)」がいる。近年、茂洋の子で肉質などの検定の歴代記録を塗り替えた「好平茂(よしひらしげ)」「勝洋(かつひろ)」が登場、次代のエースとして期待を担う。
ことし秋以降、人工授精による交配で出品する候補牛の育成が始まる。安部次長は「日本一という高いハードルに挑む過程に意義がある。県内畜産界のレベルは確実に進化する」と力を込める。
震災と福島第1原発事故の影響で、県内の生産者は飼料わらの放射能汚染や風評被害に苦しんできた。「全国の銘柄でトップ10をうかがう位置にいる」(県農林水産部)とされる仙台牛の取引価格は一時、震災前から約4割も落ち込んだ。
価格は昨年夏以降、ようやく震災前水準に戻りつつある。12年10月にあった前回の長崎大会には生産者や消費者ら計48万6000人が来場し、経済波及効果は約110億円に上ったとされる。「日本一」の称号を手にできれば、波及効果はさらに大きくなる。
県は来年度、庁内に推進室を創設し、受け入れ準備を加速させる。県畜産課の横山亮一課長は「口蹄(こうてい)疫被害から立ち上がった宮崎県が長崎大会で復活したように、われわれも地元全共で畜産復興の気概を示したい」と意気込む。
[全国和牛能力共進会宮城大会]2017年9月7~11日、仙台市宮城野区で開催。雄牛と雌牛の改良成果を競う「種牛の部」は夢メッセみやぎ、枝肉の質を評価する「肉牛の部」は市中央卸売市場食肉市場が会場。種牛は全国から約310頭、肉牛は約180頭が集まり、性別、月齢など九つの出品区ごとに審査される。