福島第1原発事故の風評被害で売り上げが激減したとして、仙台市内で複数の牛タン店を営む会社(仙台市)が東京電力に約1900万円の損害賠償を求め、政府の原子力損害賠償紛争解決センターに申し立てた和解仲介手続きは24日までに、東電が約1300万円を支払うことで和解が成立した。
風評被害の賠償が大半で、会社側は「観光業に準ずる牛タン業界の損害が認められた意義は大きい」と評価。観光客が支えとなる他業界にも波及するとみている。
関係者によると、同社の牛タン店の客は宮城県外からの観光客が約7割を占める。原発事故や東日本大震災の影響で市内への観光客が減ったのに加え、宮城県産牛から国の暫定基準値を超える放射性セシウムが相次いで検出されたこともあり、売り上げは大幅に落ち込んだ。
仙台の牛タン店の多くは外国産を使っているが、仲介手続きで会社側は「国産和牛と思っている観光客も多く、風評は大打撃だった。牛タン業界は仙台の観光業の一翼を担っており、東電は適切に責任を果たすべきだ」と主張。
東電側は原子力損害賠償紛争審査会の中間指針が観光業の風評被害の賠償対象を福島、茨城、栃木、群馬の4県としたことなどを踏まえ「指針にない地域は対象外。牛タンは和牛とうたわれているわけではなく、そんなに風評被害があるとは思えない」と反論した。
仲介委員は、風評被害で収入が減った福島を除く東北5県の観光業者について、損害の7割は原発事故が原因とする原則をセンターが示したことを重視。「観光客は牛タンを『仙台名産』や『牛』との言葉から国産と連想し、消費や購入をためらう。風評被害とはそういうものだ」と判断し、風評被害の損害の大半を賠償対象と認めた。