リズムやメロディーに合わせ、即興で自分の思いをしゃべるように歌う「ラップ」の人気が仙台圏で高まっている。中高生は街中で技能を磨き合い、仙台のシー ンを紹介したCDは東京で話題を呼んでいる。日本語ラップ熱は全国で20年ぶりに再燃中と言われ、関係者は「仙台の存在感を示す好機」と期待する。
仙台市青葉区の勾当台公園。中高生5人が4月上旬、輪になって即興でラップをする「サイファー」と呼ばれるセッションを約1時間、繰り広げた。スピーカーから流れる音楽(ビート)に乗り、身ぶりを交えながらラップをつないでいった。
石巻市出身で、首都圏で活動するDJのアンビシャスさん(46)がツイッターで参加を呼び掛けた。「3年前から帰省のたびにサイファーを企画している。最近は中高生が増えている」と語る。
1年半前にラップを始めた宮城県大和町の高校1年フラッシュさん(16)は「同級生に紹介されたラップの動画を見て『やばい(すごくいい)』と思った」と振り返る。
中高生を触発しているのは、ラップの技能を1対1で競う「MCバトル」を撮影したテレビ番組やインターネットの動画だ。青葉区のタワーレコード仙台パルコ 店は、全国規模のバトル大会のDVDや強豪ラッパーのCDをそろえた特設コーナーを今年初めに新設。モニターでバトルの様子を流している。
担当店員の田口瞬さん(30)によると、「バトル映像を入り口にラップに注目する人が増え、ファン層が厚くなった。より深く掘り下げたいというニーズも高まっている」という。
ラップを乗せるビートの製作も仙台で盛んだ。在仙インディーズレーベル「松竹梅レコーズ」は4月末、仙台圏の主なビート製作者16人の音源を網羅したCD を発売。直後に首都圏のレコードチェーン「ディスクユニオン」の週間販売枚数ランキングの該当ジャンルで1位となった。
レーベル主宰者でラップグループ「GAGLE(ガグル)」のHUNGER(ハンガー)さん(38)は「仙台は世代や音楽性ごとに複数のシーンが併存し、機会があれば協力し合う土壌がある。全国に仙台の存在感を示すため、新しい世代もうねりを起こしてほしい」と話す。