インターネット上の仮想通貨「ビットコイン」が今ちょっとした話題になっています。ビットコインと既存通貨の取引所もすでに存在しており、一部では交換レートが高騰しバブル化する懸念も出ています。ビットコインとはどのようなもので、どういったリスクがあるのでしょうか?
ビットコインは2008年に登場した仮想通貨です。純粋にインターネット上で流通し、既存の通貨のように発行元になる国家もしくは中央銀行は存在しません。しかしビットコインが根拠のないいい加減な存在なのかというと、そうでもありません。
ここではとりあえず「仮想通貨」と表記しているのですが、その内実は「仮想」ではなく、ホンモノの通貨と言ってよい存在です。というのもビットコインでは、コンピュータ上で投入された作業量(計算量)に基づく価値というものが定義されており、金本位制にかなり近いシステムになっているからです。鉱山で手間をかけて採掘した金の代わりに、コンピュータで手間と時間をかけて計算した作業そのものに価値があるとみなし、これを通貨価値の基礎としているのです(この作業には誰でも参加できますが、相当の手間がかかります)。
東京の取引所では4カ月で8倍超に
経済学的には、投下労働価値説的な考え方と金本位制の考え方をミックスしたものといってよいでしょう。この通貨システムを発明したとされる「ナカモト・サトシ」氏(日本人なのもかも含めてプロフィールは不明)は、おそらくこの両者を参考に制度を設計したとみて間違いありません。
ビットコインは限りなくホンモノの通貨に近い存在ですから、これを受け付ける店があれば、買い物をすることもできますし、海外に送金することもできます。また日本も含めて、各国に現地通貨とのネット両替所があり、手数料も一般的な為替よりも極めて安く設定されています。すでにFX取引のように投機的な動きも活発になっており、東京にある取引所では1ビットコイン=800ドルを突破し、4ヶ月で8倍以上の上昇となりました。
もしビットコインがさらに世界的に普及することになれば、日本人でもこれを利用する人が増えてくるかもしれません。通貨として安心して利用できるかどうかは、どれだけ多くの人がそれを利用するのかにかかってきます。
国際的な決済が容易なことや匿名性が保証されることから、各国の当局は監視の目を強めてきており、どこかで大きな規制が入る可能性もあります。知的楽しみとして利用してみるというのはよいでしょうが、もし本格的な利用を考えているのであれば、そのあたりの状況を確認してからでも遅くはないでしょう。
無制限の価格上昇はあり得ない
一方、投機としてその市場に参入するのは避けた方がよさそうです。その理由はビットコインの制度が金本位制に極めて近いものだからです。現在ビットコインは1000万枚が発行されていますが、その発行量は金本位制と同様、上限が決められており、2030年の時点でも2000万枚程度です。
仮にビットコインが世界に普及するようになったとしても、いつかは、ドルや円などとの理論的な為替レートが一定の水準に収束するはずです。現在のドルや円といった通貨制度が破綻しない限り、無制限に価格が上昇することはあり得ません。現在は期待が先行している状態であり、どこかでバブルがはじける可能性が大きいと考えてよいでしょう。
(The Capital Tribune Japan)