仮設住宅一戸239万円 大手建設メーカーは約48億円の特需

岩手県・釜石市。3・11まであと60日を切って、希望の年へと踏みだした街は、いまどうなっているのか。人々の生活の裏で、何が起きているのか。作家の山藤章一郎氏が報告する。
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釜石市平田(へいた)第6仮設住宅で94歳のお婆さんと会った。津波にさらわれ、全壊した町のガレキを片づけた跡が敷地の下方にのっぺり広がる仮設地である。
遥か防潮堤までつづく、そののっぺりのなかで、赤地に黄文字の大漁旗が一枚ひるがえっている。吉江お婆さんは、お爺さんとふたりで暮らす。
「なんべんも応募してたんだどもあだんなぐて。やっとここに。寒かったども、入口の扉が二重になって、なんぼかありがてえさ。全国から応援してもらって、感謝感謝ですよ。わだしだちふたりとも足悪ぐで、ベッドで寝起きしてっから、部屋が広いと助かるの」
四畳半ふたつと六畳に住み、ひたすら「感謝」を口にした。仮設住宅は災害救助法により、家賃は無料である。
ほとんど報じられていないが、仮設住宅の建設価格も同法で決まっている。1戸238万7000円。岩手、宮城、福島でほぼ3万3000戸が建てられた。
積水ハウス、大和ハウス工業が2000戸ずつ、一社47億7000万円の特需だった。ミサワホーム、積水化学工業が1000戸ずつ、ほかにトヨタホーム、パナホーム、住友林業などが請け負った。
プレハブ建設業界の三協フロンテア、大和リースも参加した。これに、キッチン、ユニットバス、ウォシュレット、冷蔵庫からエアコンがつく。
※週刊ポスト2012年1月27日号

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