上場企業の2022年3月期純利益が過去最高となった。新型コロナウイルス感染拡大で落ち込んだ経済活動が活発になり、円安も企業の利益を押し上げた。ただ、ロシアのウクライナ侵攻など不安要素は多く、企業業績の先行きは不透明だ。 【図解】2022年の対ドル円相場の推移 ―利益はどのくらい増えた。 SMBC日興証券によると、旧東証1部上場約1450社の22年3月期純利益は、前期比74.0%の大幅増(ソフトバンクグループ=SBG=を除く)。製造業が7割増、非製造業(金融とSBGを除く)は2.2倍に伸びた。 ―業種で違いはあるの。 自動車や機械などの輸出企業は円安の恩恵を受けた。海外で稼いだ外貨建て利益が円安で押し上げられた。世界的な景気回復で鉄鉱石など資源の需要が高まり、海外に権益を持つ商社が利益を伸ばした。物流が活発になった海運や鋼材を値上げした鉄鋼も好調だった。一方、電力各社は原油や天然ガスの価格高騰で費用が膨らみ、赤字が続出した。 ―23年3月期はどうなる。 鉄道や航空は旅客回復で黒字を見込む。自動車や商社、海運は大幅増益だった前期の反動などで減益を予想する。SMBC日興によると、上場企業全体の純利益予想は3.3%減(SBGを除く)。ただ、企業が前提としている外国為替相場は1ドル=120円程度なので、市場関係者は現状の円安傾向が続けば小幅増益になると想定している。 ―為替次第なんだ。 原材料価格高騰の影響も大きい。トヨタ自動車は23年3月期に原材料高が1兆4500億円の減益要因になるとみている。「過去にないレベル」(近健太副社長)で、純利益は2割減を見込む。多くの企業が原材料高に頭を抱えている。 ―製品・サービスの値段も上がるのかな。 企業が利益を確保して事業を続けるには、仕事の効率化などを通じて費用を圧縮するとともに、製品やサービスの価格を引き上げざるを得ないだろう。ただ、賃金の上昇が鈍い中での値上げは消費を抑制する恐れがある。企業にとっては、中国がコロナ対策として実施している都市封鎖の影響や、資源高を加速させたウクライナ危機の長期化なども懸念材料だ。