日本政府が、5月26、27日の伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)で、世界経済の先行きに不透明感が増していることから財政出動の重要性を確認する方向 で調整していることが3日、分かった。日本は「新三本の矢」を強化した新たな経済戦略を打ち出し、議長国として世界の持続的な成長に向け各国の積極的な取 り組みを牽引(けんいん)したい考えだ。
サミット議長の安倍晋三首相は、世界経済の下支えやリーマン・ショック級の景気悪化を防ぐため、先進7カ国(G7)による経済対策と政策協調を最重要議 題に位置付ける。中国などの新興国経済の減速や石油価格の下落など経済情勢が不安定なことから、一部の経済悪化に起因する負の連鎖が世界規模に広がらない よう先手を打つ構えだ。
財政政策の重要性を確認し、財政面での戦略が世界経済を下支えする効果や機動的な財政出動を協議する方針だ。金融政策や構造改革なども話し合う。
さらに首相は、サミットと連動する形で「新三本の矢」を強化した新たな戦略を打ち出し、新興国も巻き込んだ財政出動や金融政策などの協調を促す方針だ。
新経済戦略では平成28年度補正予算とともに、アベノミクスによる税収増を政策経費に活用することを柱とする。また、来年4月に予定される消費税率10%への引き上げを延期した場合の効果も見極める。
これまでの企業対策に加えて、消費者側の景気刺激を強化し、1億総活躍社会の関連政策を実行する。新三本の矢の狙いや政策効果を整理した上で、消費刺激を強化した新戦略とする。
首相は、女性や高齢者の就労を支援し、家計所得を引き上げながら力強い国内経済をつくり、G7と連携しながら世界規模の景気後退を防ぐことを目指す。
ただ、政府の国際金融経済分析会合に招かれたポール・クルーグマン米プリンストン大名誉教授は、首相からドイツに財政出動を促すアイデアを聞かれ「難しい」と回答している。G7各国が財政出動で足並みをそろえられるかは、それぞれの国内状況の違いから難しい面もある。