仙台市宮城野区東仙台地区の住民らが、古文書に残る地元の名物料理を再現させた。一帯の旧地名「案内」を冠し「案内の名物湯豆腐」と呼ばれた料理で、藩 制時代に利府街道沿いの茶屋が供していた。仙台藩の歴代藩主が塩釜神社参拝の折などに立ち寄り、好んで食べたとされる。「食文化を通して地域の歴史を伝え ていきたい」と関係者。再現に関わった食育グループ「もぐもぐ」による調理実演も計画する。
「案内の名物湯豆腐」再現プロジェクトは東部市民センター(同区)が企画。センターなどの講座「東仙台耀(かがや)きクラブ」が湯豆腐の調査や調理を担い、再現にこぎ着けた。
さまざまな史料によると、「案内の名物湯豆腐」は現代の湯豆腐とは全く異なる。麺のように千切りにした豆腐を器に盛り、かつお節とユズを載せて湯を入れ、しょうゆで味付けした汁物だ。
茶屋を営んでいた菅野家は藩制時代から「伊達家御用達」として、このオリジナルの湯豆腐を提供したが、大正期に廃業。味や形状を知る人もほとんどいなくなった。
菅野家に生まれ、幼いころ湯豆腐を食べていた米穀店経営大高和男さん(85)=宮城野区松岡町=の助言を受け、味や形状の再現を果たした。「滑らかな食感、さっぱりした味は当時の記憶に近い」と大高さん。
湯豆腐再現の歩みは、耀きクラブが3月末に発行する地元学の冊子で紹介する。希望があれば、もぐもぐメンバーが出張実演に応じる。地元小中学校で披露する企画も持ち上がっている。
もぐもぐの荻野洋子さん(67)は「湯豆腐を知ってもらう機会をつくり、地域の宝を継承したい」と話す。連絡先は東部市民センター022(237)0092。