伝統工芸の技をブランド化 仙台の瀬戸屋、東北の職人とコラボ 雄勝石の酒杯限定発売

食器卸売業の瀬戸屋(仙台市)は、陶芸家ら東北の伝統工芸職人と組んだ独自ブランド「彩地器(さいじき)」を設立した。既に地元の原料を使った食器などを製作するプロジェクトに取り掛かっており、21日に第1弾となる日本酒用の杯「雄雪(ゆうせつ)」を発売した。同社は杯をシリーズ化し、6県の職人が地元の石で手掛けた作品を商品化する。

 雄雪は原料に石巻市雄勝町特産の雄勝石を使用。直径約8センチ、高さ約3.5センチで、飲み口の厚さを2ミリ以下にして口当たりを軽くした。土とうわぐすりに加えた雄勝石の粉が焼けて変化し、表面の独特の乳白色を生み出した。
 約1300度の高温からゆっくり温度を下げることでできる雪の結晶のような文様も特徴で、杯一つ一つで違うという。仙台市青葉区の陶芸家岩井純さん(六華窯(りっかがま))が手掛けた。
 価格は税抜き2万円、300個限定で販売。若林区の同社本店のショールームや電子商取引(EC)サイトで取り扱う。今後は花巻市や福島県会津美里町の陶芸家と協力した商品も開発し、順次発売する。
 同社は東北を拠点とする唯一の陶磁器卸問屋。創立70年目の現在、業界を取り巻く環境は厳しい。全国の陶磁器製食器販売額は2002年に約7200億円だったが、12年には約3410億円と半減した。市場縮小に伴い百貨店や量販店など扱う店舗も減り、メーカーの直販による卸の中抜きも進んだ。
 生き残り策として考えたのが、製造から販売まで担う自社ブランドの設立。同社の売り上げのうち卸売りは将来的に2~3割程度になると想定され、彩地器ブランドの商品販売が主力事業として期待される。
 金野智哉取締役は「後継者難など問題を抱える東北の伝統工芸に光を当て、国内外に技術を発信したい。各地の窯や職人の技術の継承も目指し、杯だけでなく漆器など他の食器の製造も検討したい」と話した。

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