今、テレビ東京系の深夜枠がアツい！ テレビ離れが叫ばれる中、「俺のダンディズム」や「孤独のグルメ」といった中高年の間で話題となる番組を次々と放送し、低予算とは思えないヒット作を連発している。その制作の現場では一体何が起きているのか？「俺のダンディズム」の仕掛け人で、テレ東が誇る新進気鋭のプロデューサー、濱谷晃一氏（３７）を直撃した。
――テレ東系の深夜枠からヒット作が次々と生まれるのはなぜか
濱谷：「勇者ヨシヒコと魔王の城」や「みんな！エスパーだよ！」は「ドラマ２４」という固定のドラマ枠だったんですけど、「俺のダンディズム」や「孤独のグルメ」の枠は、必ずしもドラマにしなければいけないものではなかったんです。情報性があって面白く見られればドラマでもいいし、バラエティーでもいい。だから、とにかくいろんな企画が集まるんです。「俺のダンディズム」の撮影なんか、僕以外の監督全員がバラエティー班の人間でした（笑い）。
――とはいえ、面白い企画を集めるのも大変だし、予算の問題が出てくるのでは
濱谷：その通りです。以前、「テレ東のドラマは他局の３分の１の予算で作っている。ン百万円（推定）で作れるなんてスゴイ」という某スポーツ紙の記事を読んだのですが、「実際にはその金額の半分で作ってるんだよ！」って思わず笑ってしまいました。とにかく低予算なので、ドラマなら登場人物やシチュエーションを極力少なくするってことは考えますね。
――低予算は足かせにならないのか
濱谷：「勇者ヨシヒコ――」は低予算を前面に押し出したドラマでしたが、視聴者も「テレ東はこんなもんだ」と好意的な反応が多かった。なんていうか、テレ東自体を“弱い市民球団”みたいな目で受け入れてくれてると思うんです（笑い）。だから、予算よりもテレ東らしさを打ち出せる企画を持ってきます。
――逆転の発想にも見えるが、「○○らしさ」を社員全体が共有するのは難しいことでもある
濱谷：テレ東はアイデア重視なので、企画を通した人は若くても抜てきしてくれるんです。「ゴッドタン」の佐久間プロデューサーは僕の先輩なんですけど、入社３年目でプロデューサーと演出を任された。僕がその年齢のときは企画がさっぱりで、「ヤバイ、佐久間さんの記録が塗り替えられない」って焦ってたんですけど（笑い）。
――なるほど、企画を出した人間にその仕事が任されるのは明確だし、何よりやる気が出る。濱谷氏が手がけた「俺のダンディズム」は、どんなアイデアから生まれたのか
濱谷：「孤独のグルメ」のように、ニュース番組の「ワールドビジネスサテライト」から続けて気楽に見られるサラリーマン向けの情報ドラマを作りたいと思ってたんです。編成局の先輩と話していたら、サラリーマンの服装をすごく熱く語るのに興味を覚えまして。自分は３０代後半になってもカジュアルなものしか持ってないので、腕時計やスーツの知識をユーモアを交えながら学べたらな、と思ったのがきっかけ。タイトルは神谷町の人気レストラン「俺のイタリアン」を見て、パッと「俺のダンディズム」が浮かびました。最近、「俺の○○」ばっかりですけどね（笑い）。
――逆に、ボツになった企画もあれば教えてほしい
濱谷：（企画書を出しつつ）もちろんありますよ。この「ツイン・ピッグス」は僕が出演者が太った女性ばかりのドラマを見たいなと思って、それで太った女性が恋愛するだけじゃ面白くないから、なぜかおデブばかりが殺されていくサイキックスリラーにしようとしたんですけど、ボツでした（笑い）。
――面白そうだが、発想がぶっ飛びすぎて怒られることはないのか
濱谷：「狭いところばかり狙うな」とは言われます。でも今度、テレ東系列のＢＳジャパンで「ワーキングデッド」（１０月２日から放送）というフェイクドキュメンタリーを担当するんです。これは会社でソリティアばかりやってる人とか、コンプライアンスという言葉にとりつかれた人をゾンビに見立てるという内容です。長時間の壮大なゾンビものは予算的にも難しいけど“働くゾンビ”だけを掘り下げたほうが、内容的にも予算的にもいいなと思ったんです。
――最後に改めて、テレ東らしさを教えてください
濱谷：低予算、独自性、目新しさの３つでしょうか。最近のテレ東は素人に話しかける番組が増えており、それにばかり頼っていたら目新しさがなくなると思うので、新しい鉱脈を見つけられるよう頑張ります（笑い）。
※テレビ東京制作のドラマは関東地区以外ではテレビ東京系列、一部地域では他系列の放送局で放映されている場合もある。
■「俺のダンディズム」ＤＶＤボックス１７日から発売■濱谷氏が手がけた「俺のダンディズム」のＤＶＤボックス（ポニーキャニオン）は１７日から発売。注目の深夜枠では１０月から「ドラマ２４『玉川区役所 ＯＦ ＴＨＥ ＤＥＡＤ』」（主演・林遣都）と「甲殻不動戦記ロボサン」（主演・私立恵比寿中学）がテレビ東京・テレビ大阪他で放送予定となっている。こちらも要チェックだ。
低予算でヒット作を連発する「テレ東深夜枠」の秘密
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