東北大電気通信研究所の中沢正隆教授(光通信工学)らの研究グループは、低速なデバイスで超高速光通信を可能にする送信技術を開発した。1回に送れる情報量が大幅に増え、従来の約20分の1の動作速度でも、同じ量の情報を送ることができる。回線を道路に見立て、トラックで情報を運ぶと想定すると、1台当たりの積載量が増えた上、車両台数も倍増するイメージ。回線の利用効率向上につながり、光通信の低コスト化、低消費電力化を実現する技術として期待される。
光通信は光の点滅1回で、1ビットの情報を送ることができる。現在は1秒間に400億回点滅させて、1波長あたり40ギガビット(ギガは10億)の情報を送っている。大容量化にはこれまで波長を増やして対応してきたが、動画送信の普及などに伴って情報量は急増し、回線の通信容量は限界に近づきつつある。
限りある周波数帯を有効に活用するため、研究グループは主に無線で使われている「多値変調方式」を応用。点滅する光の明るさと、光の波の位相を何段階かに分け、双方を組み合わせることで、送信可能な情報量の拡充に取り組んだ。
無線に使う電波に比べて、光は周波数が不安定とされる。このため明るさと位相を細かく区切ると双方の情報が混じり、送信距離が長くなるとデータが正しく届かない難点があった。
中沢教授らは、レーザー光を安定して照射できる装置を開発。明るさと位相を各24段階まで区切ることで運ぶ情報を増やし、1回の点滅につき9ビットのデータを150キロ先まで送信することに成功した。さらに種類の異なる光を組み合わせ、情報送信を18ビットまで増やした。
現在、毎秒40ギガビットの情報送信に使用されるデバイスの動作速度は20~40ギガヘルツと高速だ。新技術は、さらに情報量が多い毎秒54ギガビットを、わずか3ギガヘルツの低速デバイスで送信できる。
研究グループは「従来の10倍を超える世界最高クラスの周波数利用効率が実現できた。従来のデバイスは高速になるほどエネルギーを使って熱を出すが、この技術により消費電力を抑えることもできる」と話している。