新型コロナウイルスの影響で、住む場所に対する考え方が変わりつつある。これまで大都市圏であれば、都市部に近い駅からも徒歩圏内の便利な場所に住みたいという人が多かった。しかし、リモートワークが急速に浸透したことにより、郊外のみならず、地方への移住さえも視野に入れる人が出てきている。 【「住みたい都道府県ランキング」11位以下のランキング表はこちら】 住む場所への考え方が変わりつつある今、住みたい都道府県として人気が高いのはどこだろうか。ブランド総合研究所が行った「住みたい都道府県ランキング2020」の結果を見ていこう。 このランキングは、47都道府県と国内1000の市区町村を対象に、認知度や魅力度、イメージなど全84項目からなる「地域ブランド調査2020」によるもので、今年で実施は15回目。 「住みたい(居住意欲度が高い)都道府県ランキング」は、「各都道府県に住んでみたいと思いますか?」という問いに対して、「ぜひ住みたい」を100点、「できれば住みたい」を50点、「住んでもよい」を25点、「どちらとも言えない」を0点、「あまり住みたくない」を0点として、加重平均した数値から算出した。全国の消費者3万1734人から有効回答を得た。調査期間は、2020年6月24日~7月20日。 ● 住みたい都道府県ランキング 1位は神奈川県、2位は点数急落の東京都 「住みたい都道府県ランキング2020」の1位は、前年2位の神奈川県となった。2018年以来、2年ぶりの1位だ。「ぜひ住みたい」(8.0%)、「できれば住みたい」(11.0%)、「住んでもよい」(31.1%)と、合計で50.1%の人が居住意欲を示した。 2位は昨年1位の東京都だった。居住意欲度の点数は前年の26.3点から20.5点となり、47都道府県で最も点数が低下している。「ぜひ住みたい」と回答した人の割合は前年の14.1%から9.6%へと減少したことが大きく影響した。
● 住みたい都道府県の条件は 「便利さ・都会的」から「自然の豊かさ」へ 今回のランキングの結果を受けて、同調査を行ったブランド総合研究所の田中章雄社長は、「新型コロナによる影響で、居住意欲度を上昇させる要因は、『便利さや都会的なところ』から、『自然の豊かさ』へとシフトしている印象がある」と語る。 先ほど紹介したように、昨年1位だった東京都は新型コロナウイルスの感染拡大が最も深刻になったことで、前年から居住意欲度が5.8ポイントもダウンしているのに対し、大きくその点数を伸ばしたのが沖縄県や長野県だ。 沖縄県の居住意欲度の点数は、昨年の14.9点から17.0点へとアップ。「ぜひ住みたい」と答えた人は昨年の5.5%から7.1%へ、そして「できれば住みたい」は昨年の8.7%から11.1%へと増加している。 この傾向は若い年代を中心に広がっており、20代では「ぜひ住みたい」(12.9%)「できれば住みたい」(16.5%)の割合が合計で29.4%に、30代では「ぜひ住みたい」(5.8%)「できれば住みたい」(12.5%)の割合が合計で18.3%に上った。 長野県に関しては、前年から居住意欲度の点数を最も伸ばした都道府県であり、昨年18位(8.7点)から13位(11.4点)へと順位も伸ばした。 長野県に対して「ぜひ住みたい」と答えた人は前年の2.6%から2.8%へと微増したにすぎなかったが、「できれば住みたい」と「住んでもいい」と答えた人の割合は大きく伸びている。「できれば住みたい」と答えた人は前年の3.7%から7.2%に、「住んでもいい」は前年の17.1%から20.3%へと増加した。 確かに、沖縄県や長野県は自然豊かではあるが、それ以上に自然にあふれる地域はある。自然豊かという以外に、何が住みたいと思わせる要素になっているのか。 「新型コロナの影響で3密を避けるために、自然豊かな地域に住みたいという気持ちは高まっているが、一方で生活のために、『ある程度の便利さは欲しい』という気持ちが見え隠れする結果にもなっている。 実際、市区町村版のランキングでは金沢市が昨年25位から11位へ、石川県も昨年23位から16位へと順位を伸ばしている。こうした結果からも、コロナ禍では自然と便利さを兼ね備えた場所に人気が高まるのではないか」(田中社長) (ダイヤモンド・セレクト編集部 林恭子)