住宅「もう待てない」 被災地のいま(2)進まぬ公的再建

東日本大震災の被災地で、自治体による集団移転や土地区画整理、災害公営住宅など住まいの公的再建が進んでいない。震災から間もなく3年。「もう待てない」と復興の遅れにしびれを切らした被災者が、個別に住宅再建を目指す動きが加速している。(報道部・馬場崇)
●面談受け変更
 津波で約5700人の住民のうち約750人が亡くなった宮城県名取市閖上地区。「あまりにも時間がたち過ぎた」。自宅を失った主婦菊地訓子(のりこ)さん(50)が嘆く。
 2013年11月、閖上地区の土地区画整理事業が認可され、かさ上げによる現地再建を基本とする市の復興計画がようやく動きだした。
 市が閖上地区の復興計画を策定したのは震災から半年後の11年10月。スタートは早かったが、その後に実施した住民との個別面談で「閖上に戻りたい」と答えた人は約3割にとどまった。津波への恐怖は根深く、現地再建への抵抗は強かった。
 市はかさ上げによる現地再建の面積を2度にわたって縮小した。当初、70ヘクタールだった計画を32ヘクタールとし、集団移転と併用する折衷案をまとめた。この間、2年の歳月が流れた。
 計画策定に向けた提言をまとめた「新たな未来会議」の委員だった菊地さんは、当初から「住民の意向をきちんと聴いてから計画を進めるべきだ」と訴えてきた。
 計画作りが滞る間、多くの住民が閖上を去った。菊地さんも市内陸部に土地を購入して自宅を再建し、13年10月に引っ越した。近所には閖上から移転した人が多く、新しいコミュニティーができつつある。
 「市はあまりにも住民の意見を聴かなかった。もう少し歩み寄ればもっと早くできたはず。人が戻らない街をつくってどうするのか」。菊地さんは悔しさをにじませる。
●完了は18年度
 500人が犠牲になったとされる宮城県石巻市門脇地区。市は、新たに整備する高盛り土道路より内陸側の約24ヘクタールで土地区画整理を進める。
 「戻るって言う人が見当たらないほどだ」。住民で組織する「門脇町復興街づくり協議会」会長の田代方政さん(66)がこぼす。
 市が13年3月にまとめた意向調査によると、地権者453人のうち区画整理による現地再建を希望した人は98人。269人は土地の売却を求めた。震災前1260人いた対象人口は、推計で250人に落ち込む。
 地区で店舗兼住宅を流された60代男性は当初、現地再建を考えたが、諦めた。「地区に人が戻らなければ商売はできない。市の内陸部は地価が上昇しており、待てなかった」。元の土地は、市に買い取りを申請した。
 住民が地区を去る大きな理由は、時の経過だ。市はことし、高盛り土道路整備に着工するが、区画整理事業が完了するのは18年度になる。
 田代さんが住民感情を代弁する。「震災から既に3年近くたつ。さらに4、5年先まで待ち続けられる人はいない」

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