この7月から遺産相続を巡るルールが大きく変わる。民法が改正されるのだが、それを目前に、税理士をはじめとする専門家の「相続対策セミナー」に、多くの人が集まっているという。そうしたセミナーではどんな「質問」が出て、どういった「正解」が示されるのか。円満相続税理士法人代表で税理士の橘慶太氏が回答する。
【質問】
〈住民票だけの同居でも、実家の相続税がタダになりますか?〉
【回答】
〈いいえ。住民票だけの同居では小規模宅地等の特例には該当せず、所定の相続税がかかります〉
実家を相続する際の“最強の味方”とされるのが「小規模宅地等の特例」だ。
「同居する親が亡くなった際、自宅の土地の相続税評価額が8割減になる制度です(330平米まで)。減額幅が非常に大きいので、この特例が使えるかどうかで相続税が何百万円も変わるケースがあります」
仮に1億円の土地を所有していても、親と同居する子供が相続すれば、評価額は2000万円まで下がり、基礎控除額を下回るため相続税はゼロになる。一方で親と同居していない子供が相続すると、約1220万円の相続税が発生する(法定相続人が1人のケース)。
この特例は、親が老人ホームに入居している場合や、二世帯住宅の場合でも適用できる。相続セミナーでは、「実際に同居していなくても、住民票が一緒なら特例を使えますか?」といった質問も多いという。
「住民票が親と一緒でも、同居の実態がない場合、この特例は使えません。非常に影響の大きい特例のため、同居の実態については税務署員が徹底的に調べます。同居していたように見せかけるのは慎むべきです」
ただし、上手に活用する術はある。
「同居期間に定めはなく、親が亡くなる1週間前から同居を始めても、この特例を受けられます。ただし、亡くなった後、最低10か月間は同じ家に住み続ける必要があります」
メリットの大きな特例だけに、適用条件はしっかり把握しておきたい。