一向に終息する気配を見せない新型コロナウイルスの感染拡大。世界的な恐慌が起きようとしているなか、それぞれの業界はどんな局面を迎えているのか。その道のエキスパートたちに現状を解き明かしてもらうと、今まで誰も経験したことのない危機的状況になることが浮き彫りに。もはやコロナ恐慌の到来を覚悟するしかない!
◆休業要請の影響をもろに受けて、飲食は瀕死状態
サラリーマンの食を支える飲食店も重大な危機に直面している。日本の外食産業の規模は、およそ26兆円。しかし、グルメジャーナリストの東龍氏によれば「13兆円以下に落ち込む危険性もある」という。
「当初から『会食は避けて』と言われたことも厳しさに繋がった。僕の知る限りでは、95%の個人店が時短営業や休業を余儀なくされています。4月は売り上げがほぼゼロ、その後も厳しいとなると、80~90%の店が継続困難な状態に陥るでしょう」
また、飲食業界は終息後の回復の遅さも懸念されるという。
「窮地に立たされているのは店だけでなく、野菜や肉の契約農家や生産者も同様です。それまで高級店や、こだわりの食材を使う店と契約していたところも、状況によっては生産をやめるしかない。そうなると事態が収束しても、材料の調達が困難になって料理の提供が難しくなる。『本当にウイルスは消えたのか』と、人々の外食に対する不安もすぐに拭えるか、正直未知数です」
体力があるチェーン店はまだいいが、「個人店の場合、夏ごろを境にバタバタとドミノのようにつぶれる恐れがある」と東龍氏。
店を応援したいと思っても、今は外で自由に食事することすらままならない。先の見えない状態が続きそうだ。
壊滅的な飲食業界に比べ、逆に好調なのがネット販売だ。物流やネット販売に詳しい経営コンサルタントの角井亮一氏によると、“コロナ特需”が発生したのだという。
「弊社が運営する再配達アプリ『ウケトル』のデータによると、2月28日からの1週間で出荷数が161%に急増。安倍首相の打ち出した休校や休業を受けた形です。ただ、生活用品の需要が先食い的に、ネット販売に集中しただけであり、アパレルや家具など、必需品以外の消費は下がるはず、年間を通すと110%程度に落ち着くと予想します。宅配現場は相変わらず疲弊しており、出荷数が増えたことで遅配が続出。唯一の救いは在宅率が高くなり、再配達率が低下していることでしょうか」
その一方で、実店舗を構える百貨店の売り上げは壊滅的だ。
「今年3月の大手百貨店5社の売上高は、前年同月比で30~40%減。大丸松坂屋の免税売上高が前年同月比97%減を筆頭に、インバウンド消費がなくなった影響が甚大です。休業要請の対象外ではありますが、営業時間短縮や一部休業。旅行客が増えるはずもなく、都市部では休日の外出も減るため、下手すると年間の売り上げは半減する可能性もあるでしょう」
斜陽産業といわれて久しい百貨店が、ついに終わりを迎えるのか。
【グルメジャーナリスト・東龍氏】
TVチャンピオン食べ放題通選手権2連覇。ブッフェ評論家。美食やトレンド、食のあり方から飲食店の課題まで、独自の切り口でわかりやすい記事を執筆
【経営コンサルタント・角井亮一氏】
イー・ロジット代表取締役。自動荷物追跡と再配達依頼ができるアプリ「ウケトル」を運営。物流や小売業事情に精通する。著書に『すごい物流戦略』(PHP研究所)