値上がり続く文庫本 平均価格800円超 20年で25%値上がり 千円台も続々 ハードカバーより高価買い取りのケースも

かつてはワンコインのイメージがあった文庫本の値段が、年々上がっている。新刊の平均価格はこの20年間で約25%上昇し、昨年は1冊732円で、税込みでは800円を突破。今では千円を超えるものも珍しくない。一方、古書店では文庫本の需要が高くなっており、一部の買取価格がハードカバー(単行本)より文庫本の方が高くなる逆転現象も起きている。 【写真】学術系の文庫本は千円を超えるケースも珍しくありません  出版科学研究所(東京都)の調査では、文庫本の新刊平均価格は2001年が587円だったが、21年には732円に上昇。税込は805円となった。本の売り上げが減り、初版部数の減少や紙の高騰が大きな要因という。価格は年々上がり続け、今年はウクライナ情勢などで2~3パーセント上がる見込み。また、時代小説などは読者の高齢化に合わせて読みやすいように文字を大きくしているため、ページ数が増える傾向も一つの理由という。 ■学術系や部厚い小説は千円超も 「学術系や海外が版元の小説などの値段は高いですね」とは、ジュンク堂書店三宮書店(神戸市)で文庫・新書を担当する女性。ちくま文芸文庫の「病気と治療の文化人類学」1320円(以下いずれも税込)、岩波現代文庫の「原子・原子核・原子力-わたしが講義で伝えたかったこと」1628円…。店内を一緒に回ると、学術系の文庫本は千円を超えるものが多くあった。ページ数の多いものも平均価格より高く、664ページある人気作品「自転しながら公転する」は1045円だった。  映画やドラマなどに映像化された作品は平均価格と比べて低めの本も。湊かなえさんの「母性」は693円、知念実希人さんの「祈りのカルテ」は704円。古いものでは、新潮文庫から出ている夏目漱石の「坊ちゃん」341円、太宰治の「走れメロス」440円と低めだった。女性店員は「何度も重版されている歴史ある作品は価格が低めなのでしょうか」と推測する。 ■古書店では文庫本の需要高く  一方、古書店でも文庫本の値段は上がっているという。インターネットで古本の買取と販売を行う「NET OFF」(愛知県)によると、文庫本はハードカバーよりも小さく持ち運びしやすいため、本を多読する人から需要が高くなっているという。そのため、おのずと買取価格も高くなるという。  買取価格の傾向としては、文庫本が発売されていないハードカバーは高値が維持される。しかし、文庫本が発売されたタイミングでは文庫本の方が高くなり、時間が経つと同じ値段に落ちつくことが多いという。 (まいどなニュース・山脇 未菜美)

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