汗のニオイとはちょっと違う、ツンとしたニオイ。金融機関に勤めるユカさん(46)はある日、後輩(45)から漂ってきたそのニオイに不安を感じた。
「私も同じようなニオイがするのかな?」
ライターのナオさん(46)は家族から「今すごく忙しいでしょ」と言われ、その理由を聞いてショックを受けた。
「私が忙しく働いている時はいつも、男の人のニオイがするって言うんです」
2人の頭をよぎったのが「加齢臭」。だが、加齢臭とは中高年男性ならではのニオイではなかったか。体臭に詳しい五味クリニックの五味常明院長は言う。
「加齢臭は人が年齢を重ねるにつれ、必ず発生する中高年特有のニオイです。仕組みは男女共通。強弱の差はあっても男性特有のニオイではありません」
人には皮膚の潤いを保つために皮脂を分泌する「皮脂腺」が全身に分布している。年齢を重ねると、この皮脂腺の中の脂肪酸が増加。同時に、過酸化脂質という物質も増え始める。この脂肪酸と過酸化脂質が結びつき、分解・酸化されることで、ノネナールという加齢臭のもととなる物質が発生する。
実は、働く30~40代の女性にとって加齢臭より気になるニオイがある。「疲労臭」だ。
「疲労臭とは汗から出る、ツンとしたアンモニアのニオイ。最近働く女性に増えています。疲労が蓄積すると体内に乳酸が増加していき、それに比例して汗の成分にアンモニアが増え、ニオイのもとになります」
アンモニアは通常、肝臓で無害な尿素に作り替えられ、尿として体外に排出される。だが、日中忙しく動き回り、疲労が蓄積。夜はアルコールを飲み、風呂にも入らず、睡眠不足…。そんな生活を送っている女性は肝臓が弱っている場合が多く、アンモニアを処理しきれず、疲労臭が強くなるという。さらに、ストレスによる免疫力の低下や、現代人はエアコン依存で汗腺の機能が弱まっているため、よい汗をかけなくなっていることも疲労臭の発生に拍車をかける。
冒頭のユカさんの後輩は、毎日朝8時前に出勤し、夜は9時、10時まで残業。ビールが好きで夕飯代わりにすることもしばしば。顔には疲れが滲んでいるという。「若くてもストレスなどが原因で皮脂腺が酸化すると、加齢臭と同じようなニオイがする」(五味院長)ことも。働き過ぎの女性は、「疲労・加齢・ストレス臭」のトリプルパンチに見舞われる可能性がある。