元サッカー日本代表の石川直宏さんが本気で農業 築地に大根持ち込み意欲

元サッカー日本代表で、J1・FC東京の人気選手だった石川直宏さん(40)が本気で農場経営に取り組み、できあがった農作物を東京・築地市場とタッグを組んで売り出す計画を進行させている。このほど築地場外を訪れ、みずから丹精こめて育てあげた葉付き大根を持ち込んで「いろんなことができそう。農業から可能性が広がっていく」と意欲をみせた。 【写真】東京・三鷹市の農場伊藤園で自分で種をまいた白菜を収穫する石川さん 今月初旬、石川さんが築地場外に葉っぱの長い太い大根を両手で抱えて持ってきた。広く流通している「青首」とは別種で全体が真っ白な江戸伝統野菜の「大蔵大根」だ。鶏肉専門「鳥藤(とりとう)」では東京・あきる野市で育てている「東京しゃも」の解体を見学し、卵焼き「つきぢ松露」や練り物「紀文築地店」などを訪れ、店主らと積極的に意見交換した。 築地場外の調理のできるスタジオで、自作の大根と東京しゃもで煮物をつくってもらい、卵焼きに大根おろしを乗せて食べると「築地の商品とのコラボ、いいですね。大根のうまさもひきたててくれる。僕のつくった大根をいろいろな形で築地で売りたいですね」と笑顔をみせた。 現役時代は敵陣のスペースを俊足で切り裂くスピードスターで、停滞する局面を好転させる切り札として活躍した。20年前、当時は珍しい金髪をなびかせて相手DF陣を翻弄(ほんろう)した。「先発で90分やりたかった。使ってもらうため金髪にしたのか、何で染めたんだっけ。でも、仮にオレが監督だとしたら、オレみたいな選手は途中で投入できるようにベンチに置いておきますね」と笑い「人生うまくいかないです。農業も同じ。自分ではなんともならないころころ変わる天候に右往左往する。だから、作物を収穫できたときの喜びは格別。いろんな人に農業を体験してもらいたい」と話した。 農業との接点は2年前にさかのぼる。所属していたFC東京を2017年で引退し、そのまま同クラブにかかわる人やイベントなどで交流をはかる「クラブコミュニケーター(CC)」に就任した。石川さんは19年に三鷹市の農場・伊藤園で実施されたサポーターとの交流イベント「農場でバーベキュー」に参加。種まきや作物の収穫を体験して「これは使える」とひらめいたという。 石川さん 地道な練習と同じで農業も雑草取りから始まる。畑仕事はすべての人に平等。競技者とファンをつなげるのは農業なんだと感じた。 長野・飯綱町に農場をつくるためクラウドファンディングで出資者を募った。約240万円を集めて同町の約14アールに「NAOs FARM」という農園を開き農場長となった。8月にはトウモロコシを収穫してファンとの交流イベントも成功させた。来年は「米作りにもチャレンジしたい」と石川さんは話した。 農業に触れるきっかけとなった伊藤園の4代目伊藤紀幸さん(40)はFC東京サポーターで、ずっとゴール裏から石川さんを応援していた。築地に持ち込んだ大根は伊藤園で石川さんが種をまいてつくったもの。「全国いろんな場所でサッカーもやったけど、これからは長野と三鷹で農業を通していろいろとみなさんを巻き込んでいきたい」と石川さんは熱っぽく語った。【寺沢卓】 ◆石川直宏(いしかわ・なおひろ)1981年(昭56)5月12日、神奈川県横須賀市生まれ。横浜から02年4月に東京へ期限付き移籍。03年8月に完全移籍して同12月に日本代表デビュー。04年アテネ五輪出場、JリーグオールスターMVP。俊足を武器に、東京での獲得タイトルはナビスコ杯2度と天皇杯1度。09年はリーグ戦で15得点、ベストイレブン。J1通算289試合49得点。国際Aマッチ通算6試合無得点。17年シーズンをもって現役引退。175センチ、70キロ。血液型B。

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