元国税調査官がこっそり教える、親の家を「無税」で相続する方法

これまで数々の税金を巡る真実を白日の下に晒してきた、元国税調査官で作家の大村大次郎さん。そんな大村さんが今回、メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で明かしているのは、親の所有する家を「無税」で相続する方法です。親と同居している人や親元を離れて賃貸で暮らす「家なき子」など、それぞれの異なったシチュエーションで受けられる「優遇制度」とは?

親の家を無税で相続する方法

相続税法は平成27年に大幅に改正され、課税対象者が大幅に増えました。それ以前は、最低でも5800万円の遺産をもらわなければ相続税はかかってきませんでした。

が、平成27年からは3600万円以上の遺産をもらえば相続税がかかる可能性が出てきました。

3600万円というと、ちょっと都会に家を持っていれば超えてしまうような額です。親が、そういう家を所有して住んでいる、という人はけっこういるのではないでしょうか?都心部であれば、狭い家でも普通に4~5000万円しますからね。買うときは安かったけど、今はすごく地価が上がっているという場所も、都心部にはけっこうありますし。そういう人たちは、相続税に対して戦々恐々としているのではないでしょうか?

そういう「親の自宅のために相続税がかかりそう」という人のために、今回は、親の自宅を無税で相続する方法をご紹介します。

対象となる家は、時価で3000万円から2億円程度です。2億円以上となると、ちょっとゼロにするのは難しいと言えます。まあ、2億円以上の豪邸をお持ちになっている人は、それなりに税金を払うべきだと思いますし…

一番いいのは二世帯住宅にすること

親の家を相続する際に、一番いいのは二世帯住宅にすることです。現在の税法では、「小規模宅地等の特例」と呼ばれるものがあります。これは330平方メートル以内の宅地を、死亡した人と同居している親族が相続した場合、土地の価格の8割減で評価されるというものです。

つまり、時価2億円の土地であっても、相続税の財産評価としては4000万円でいいのです。4000万円となると、相続税がかかるかかからないかギリギリのところです。相続人が2人以下の場合は相続税がかかりますが、相続人が3人の場合は相続税がかかりま

せん。

また、年間110万円の控除を使って、生前に資産を分配していれば、4~5年で最低でも550万円の遺産を減らすことができます。

つまりは、4000万円くらいの相続資産であれば、4~5年もあれば、相続税をかからなくすることができる、ということです。だから、「二世帯住宅」に親と一緒に住めば、事実上、時価2億円程度の家は、無税で引き継ぐことができるのです。

土地の広さの限度は330平方メートルになっていますが、これは坪にすると100坪です。100坪というと、都心部ではそうそう見られないくらいの広さです。

だから、ほとんどの家は、この限度内に収まるはずです。そして、この「小規模宅地等の特例」は広さの縛りはありますが、価格の縛りはありません。つまり、330平方メートル以内であれば、どこの土地でもいいのです。日本一地価が高いとされている「銀座の鳩居堂前」の土地であっても対象となるのです。

完全分離型の二世帯住宅でもOK

この「小規模宅地等の特例」は、非常に魅力的な制度ですが、「同居」という条件があるので、そこで引っかかっている人もけっこう多いはずです。

が、この「小規模宅地の特例」は、平成27年の改正により、完全分離型の二世帯住宅も対象とされることになりました。以前は、完全分離型の二世帯住宅はこの特例の対象外とされていました。玄関や住宅の一部が共同になっている住宅しか、この特例の対象とはされなかったのです。しかし、平成27年の税制改正からは、玄関が別々で、両家の間が行き来できない「完全分離型」でもいいということになったのです。

完全分離型の二世帯住宅ならば、二世帯住宅のハードルもかなり下がるのではないでしょうか?

親が老人ホームに入居しても可

また平成27年の改正では、「死亡時に老人ホームにいても、入所前に同居していれば、特例の対象となる」ということになりました。この特例は、何度か述べましたように、原則として財産を持っている人と、それを相続する人が同居していなくては適用できません。

だから、以前は、親が高齢のために老人ホームに入所したような場合は、この特例が適用できなくなっていたのです。しかし、平成27年の改正により、親が老人ホームに入所したことで、死亡した時にその家に住んでいなかったとしても、介護が必要なために入所したような場合は、適用されることになったのです。

同居していなくても無税で親の家をもらう方法

しかも、この「小規模宅等の特例」では、必ずしも同居していなくても、この優遇制度を受けられるケースがあるのです。それは、どういうケースか簡単にというと、

「被相続人に同居している相続人がいないこと」

「相続人が自分の家を持っていないこと」

です。

つまり、持ち家がなく賃貸住宅に住んでいる相続人が、故人の家を引き継いだ場合、この優遇制度を受けられるのです。

典型的なケースでは、故人が一人暮らしで、子供は別のところで賃貸住宅に住んでいる、というようなものです。こういうケースは、昨今よくあると思われます。

この制度は「家なき子制度」と言われています。この「家なき子制度」は、家を持っていても売却してしまっている人や、持ち家を賃貸に出して3年以上経過した人も、対象になります。

家なき子制度の主な条件は、次の2点です。

故人と同居していた法定相続人がいない法定相続人は3年以上、賃貸住宅に住んでいる

この条件に満たしているような人は、ぜひ「家なき子制度」を使いたいものです。

家なき子制度の改正点とは?

実は、この「家なき子の制度」は、平成30年度に大きく改正されました。なので、その改正内容についても、紹介しておきますね。平成30年度の改正により、次の者は、家なき子制度を受けることができなくなりました。

相続開始前3年以内に3親等の親族等が所有する家屋に居住したことがある者相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者

つまりは、自分は家を持っていないけれど、配偶者所有の家に住んでいるなどという人は、対象外ということです。なぜこのような改正が行われたか、というと、自分の持ち家を配偶者の名義にして、自分は家を持っていないということにして、家なき子制度を受けようというものや「本当は家を持っているのに、家なき子制度を受けるためだけに自宅を親族などに売却する者」などがでてきたからです。

家なき子制度というのは、持ち家のない人が、一人暮らしの親の家などを相続しやすくするための制度です。

今回の改正は、その趣旨を厳正に守るためのものだといえます。普通の人にとっては、この改正があったとしても充分にありがたい制度のはずです。対象となる人は、ぜひ使ってみてください。

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