先生足りないSOS 欠員でも代替講師見つからず 宮城の小中学校、現場でカバー限界

「宮城県内の小中学校で先生の欠員が深刻だ」。ある現役教諭からの悲痛な訴えが「読者とともに 特別報道室」に寄せられた。県教委と仙台市教委に聞くと、病気や出産、育児で長期休業した人の代わりとなる講師が見つからないなどし、一部の学校で人員不足が生じているという。今のところ児童生徒に履修漏れはないものの、授業が遅れるなどの影響が出ている。
 仙台市立のある中学校では7月上旬、国語と英語を担当する教諭2人が出産や病気のため相次いで休業に入った。講師がすぐに見つからず、残った人員でカバーすることになった。
 国語は2人の担当教諭が受け持ったが時間割はびっしり。日中の空き時間に授業の準備やテストの採点ができなくなり、夜遅くまで残業せざるを得なくなった。一部の学級は国語の授業を講師が見つかるまで見合わせ、他教科の授業を前倒しで実施した。
 残った4人で対応した英語は、3年生で実施していた小人数指導に人員を割けず、中止を余儀なくされた。夏休み明けの8月末に国語の講師、10月1日に英語の講師がそれぞれ着任し、欠員はなくなった。
 県教委と市教委によると、県内の公立小中学校では9月1日時点で107人の教員が不足。既に講師が見つかって欠員が解消された学校もあるが、年間を通じて教員不足は続く。
 児童生徒数や学級数から算出する「基礎定数」は全学校が満たすが、東日本大震災で被災した子どもの支援、いじめ防止対策で教員を増員する「加配措置」も含めると定数を下回る。
 県教委の担当者は「学年主任や教務主任が学級担任を兼務するなどし、児童生徒の学習に影響がないようにしている」と説明する。
 現役教諭の一人は「自己都合や家庭の事情での休業は想定される事態。現場の頑張りで対応しているが、いつか授業ができなくなり、児童生徒に不利益を与える」と懸念する。
(田柳暁)

◎難しい後任配置 厳しい勤務実態背景か

 宮城県内では公立小中学校の教員に欠員が生じた場合、科目や勤務地などの条件を踏まえ、事前に登録された非正規雇用の講師を後任として配置する。以前は教員採用試験の合格を目指す若手、育児が一段落した教員免許を持つ女性が登録したが、近年は厳しい勤務実態を背景に登録者数が減り、後任選びが難しくなっている。
 県教委によると、今年4月1日時点の講師登録は932人。5年前に比べて598人少ない。仙台市教委の登録数は同日時点で1179人。ここ数年はほぼ横ばいで推移し、伸び悩む。
 県教委の担当者は「教員免許の取得者が減っている上、民間企業に人材が流れている」と分析。市教委の担当者は「長時間労働などの厳しい勤務実態が知られ、講師登録を敬遠する傾向がある」と指摘する。
 このため、年度途中に欠員が生じると、学校は人海戦術で講師を探す。知り合いの教員経験者に声を掛け、講師登録をお願いすることも少なくない。
 7月上旬に国語と英語の教諭2人が休業に入った仙台市立中も苦労した。ある教諭は「学校総出で講師の引き受け手を探した。多いときは数十人に打診したこともあった」と明かす。
 講師登録の減少は、仙台市教委が教育の質向上を狙い、本年度、多くの講師を正規の教諭として採用した影響を指摘する声もある。講師が教諭として現場に出たため、欠員を補う要員が減ったという見方だ。
 県教委は今後、採用試験の不合格者を対象に登録を呼び掛け、講師の確保に乗り出す。教職員課の担当者は「待遇は正規の教員とそれほど変わらない。一足早く教壇に立ち、現場を体感できる」とアピールする。
 宮城教育大教職大学院の本図愛実教授(教育制度・経営)は「学校で代替の講師を探すのは限界があり、県教委や市教委のバックアップ態勢が必要だ。定年退職者に講師となってもらう手もある」と提案する。

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