入国制限の事前通報あった?なかった? 日韓発表で再び食い違い

菅義偉官房長官は9日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、韓国からの入国制限を強化した措置について「わが国の考え方や措置の内容は、外交ルートで韓国側に事前通報を行った」と述べた。韓国政府は6日に「事前協議や通知なしに日本側が一方的に発表した」と反発していた。2019年11月に輸出管理の政策対話再開を発表した時に続き、日韓両政府の発表内容の「食い違い」がまたも表面化した。

 「諸外国で感染が拡大する中、機動的な水際対策が不可欠だ。(6日の)措置発表の時点で韓国の国内感染者が6000人以上だったという事実に基づく措置であり、日韓関係に影響を与えることを意図した措置では全くない」。菅氏は9日の会見で、韓国からの入国制限の根拠を説明した。その上で「事前通報とともに、発表後も丁寧に説明している」と述べ、「日本側の一方的な発表」とする韓国の主張に真っ向から反論した。

 複数の日本政府関係者によると、日本側は措置の内容や目的について事前に外交ルートで韓国側に伝えていた。韓国政府関係者も「一定の説明はあった」と認める。ただ、韓国側は日本側の説明に納得していなかったため、日本側の発表後に「一方的な発表」と反発。対抗措置として、短期滞在の日本人に対する査証免除措置を停止した。

 発表内容を巡って、日韓で見解が食い違うのは今回が初めてではない。最近では19年11月、日本側が輸出管理に関する日韓の政策対話再開を発表した際、「韓国側が輸出管理の問題点の改善に向けた意欲を示したと受け取っている」とする説明に韓国側が反発。韓国側が「抗議に対して、日本が謝罪した」と公表すると、今度は日本側が「政府として謝罪した事実はない」と反論した。19年7月に開かれた日本側の対韓輸出管理厳格化を受けた事務レベル協議でも、韓国側による措置撤回要請の有無を巡って発表内容が食い違った。

 日本政府関係者は「韓国が国内向けに誇張した発信をするのはよくあることだ」と冷めた見方を示す。政権幹部も「韓国はあったことも『ない』と言ってしまう」と突き放す。

 ただ、日韓双方とも、国内の新型コロナウイルス対策が急務の中、対立の深刻化は望んでいない。菅氏も9日の会見で「今後も韓国を含む国際社会に対し、今般の水際対策の強化を含めて、日本の感染防止対策や日本の状況を丁寧に説明していきたい」と“大人の対応”を見せた。【秋山信一】

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