入国制限の拡大警戒 日本企業、業務に支障も 新型肺炎

新型コロナウイルス対策として、感染が広がる日本からの入国を制限する動きが海外で目立ってきた。中国・上海市などが入国者を14日間隔離して経過観察する方針を打ち出したほか、インドは今月3日以前に日本人に発給した入国ビザ(査証)を無効とする措置を発表。業務に支障が生じるケースもあり、海外事業を展開する日本企業は入国制限の拡大に警戒を強めている。

 東芝は4日、インド当局の発表を受け、全ての海外駐在員に対し、私的な渡航を含め、できるだけ出国を控えるよう通知した。「いったん出国すると、他の国でも再入国を制限されかねない」(広報担当)ためだ。東洋エンジニアリングは3日、インドへの渡航を急きょ中止し、インドを含む外国への出張を原則禁止した。

 大手商社幹部は「インドから日本への出張者が現地に戻れないと業務に支障が生じる」と打ち明ける。インドの乗用車市場でトップシェアを誇るスズキは「情報収集を進めている」(広報担当)と説明。新型肺炎が及ぼす影響を見極める構えだ。

 中国向けの対応については、多くの企業が「既に不要不急の出張は見合わせている」(イオン)ため、直接的な影響は限られるとみられる。中国から日本に帰国中の駐在員がいる企業は「いつ中国に戻るか状況を見極めながら検討していく」(ヤマハ発動機)という。

 ただ、事態が悪化すれば、入国制限が一段と広がる可能性もある。自動車業界関係者は「米国が日本人の入国を制限すれば、事業への影響は大きい」と懸念している。米国は日本への渡航について注意喚起のレベルを引き上げているだけに、不安は拭い切れない状況だ。 

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