ギリシャの財政危機などによる株価暴落で、世界の株式市場の時価総額が620兆円程度目減りしたとみられることが分かった。欧州の信用不安に対する懸念は根強く、株価がいったん上昇に転じたとしても再び下降線を描く可能性は大きい。時価総額の減少傾向は今後も続くおそれがある。
国際取引所連盟(WFE)が公表している世界時価総額によると、4月末時点は49兆1800億ドル(約4420兆円)だった。
その後、ギリシャ問題の深刻化を受けて、欧米やアジア株が下落。世界の株価指数が対象のMSCIワールドインデックスをもとに、4月末から5月21日までの世界の時価総額の減少額を試算すると、約6・8兆ドル(約620兆円)程度と見込まれる。
MSCI自体も、4月中旬のピーク時から5月21日までに約14%下落している。
東京証券取引所に限ってみれば、1部、2部、マザーズの4月末時点の時価総額の合計額は338兆467億円。これが5月21日には30兆円超も落ち込んでいる。
市場では、ギリシャ問題の拡大が不安視されている。「財政状況が懸念される欧州の国々が『PIIGS』(ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインの頭文字をつなげた造語)と呼ばれているが、最近では『CHAPS』(チェコ、ハンガリー、オーストリア、ポーランド、スロバキア)という造語も出てきている。政策対応が遅れると問題が拡大しかねない」(みずほ証券の瀬川剛エクイティストラテジスト)
これに加えて、米国やドイツで金融規制強化の動きが強まっていることも、株式市場にとっては逆風。ヘッジファンドに対する強い規制などが進むとみられ、投資家がリスク資産への投資を控える傾向にある。
また、為替市場でも対ドル、対ユーロでの円高が進行。これにより、売上高で輸出比率の高い電機、精密、自動車といった日本の主要企業が、ギリシャ問題拡大に伴う欧州の景気低迷と円高というダブルパンチに見舞われ、業績が悪化する懸念が高まっている。
こうしたマイナス要因により、株価はまだまだ下げる可能性がある。