政府は、全国約1800の地方自治体が使うITシステムを共通化する方針を固めた。人口減少とともに、自治体の職員も不足してシステムの維持が困難になる恐れがあり、学校の事務など各自治体に共通する業務のシステムを統一して行政事務を効率化する。政府が6月に策定する「国・地方デジタル共通基盤に関する基本方針」に盛り込む。 【図】自治体のITシステムこう変わる
都道府県や市区町村は現在、新たな業務が増えるたびに個別にシステムを構築しており、300を超えるシステムを保有する政令市もある。今後は、政府が主導してシステムを整備し、自治体が利用する形に転換する。
1994年に330万人いた自治体の職員は2023年に280万人にまで減少した。人手不足が深刻化しており、政府のデジタル行財政改革会議によると、情報システムの担当者が1人以下の自治体は300近くに達する。職員がさらに減れば、システムの維持や住民サービスの提供にも支障を来しかねず、「各自治体に共通する業務は、システムの統一化が望ましい」との声が上がっていた。
政府は今後、自治体との連絡協議会を新設し、システムを共通化する業務の洗い出しを進める。給付金の支給や小中学校の事務が共通化の対象になる見込みで、保育や介護関連の業務も候補になるという。
政府は、国と自治体が利用する共通の基盤システム「政府クラウド(ガバメントクラウド)」計画を進めている。共通化を図る自治体のシステムは、政府クラウドの基盤上に構築する。
政府クラウド計画では、国が主導する形で自治体の移行作業の期限を25年度末とする目標を定めたが、自治体側から「期間が短すぎる」と反発を招いた経緯がある。政府は今回、自治体と密接に協議しながら段階的に共通化を進める方針だ。