公取委がグルメサイト調査「利用者の9割が実態知らず」

公正取引委員会は3月18日、グルメサイトと外食店の取引実態に関する調査報告書を発表した。これまで本連載で取り上げてきた店舗の評価・点数や、インターネット予約システムなどについて外食店が抱く不満の構造を明らかにし、「飲食店に対し優越的地位にあるグルメサイトが存在する可能性は高い」と指摘した。

 調査は2019年4月~20年3月にかけて、グルメサイトの運営会社や全国の外食店約1600店、一般消費者約1万人などに対して実施した。独占禁止法違反となる恐れがある事例をまとめることで、グルメサイト業界に自主的な改善を促す狙いがある。

 日経ビジネス電子版「グルメサイトという幻」(関連記事参照)で指摘してきたように、外食店はユーザーが店舗を検索した際に表示される順位や、食べログに代表される点数に対し、不満を抱いている。表示順位は外食店が林立する繁華街では、高額の掲載料を払っても上位に表示されるか分からない不透明性があり、店舗の点数や評価については算出する詳細な基準が明らかにされないまま、点数を上げようとすることに疲れた外食店が出てきている。

 報告書によると、多くのグルメサイトでは、高額な掲載料を支払っている外食店が検索の上位に表示される。同じ料金プランの場合は、インターネット予約の空席数や閲覧者数、ポイント・プログラムへの参加の有無などで決まる。グルメサイトは外食店向けの広告媒体という性質を持っており、料金次第で掲載順位が変わるのは当然とも言えるが、「グルメサイトから集客のために表示順位を上げなければならないと言われると、高額プランを契約せざるを得ない」(外食店)ケースがあり、公取委は「優越的地位の乱用となる恐れがある」とした。

 店舗の点数や評価についても、「飲食店が支払う手数料の有無は影響しない。不正を排除するため算出アルゴリズムの詳細は開示できない」とのグルメサイト側の主張に対し、「有料加盟店をやめたら大きく点数が下がり、再び有料に戻したら点数が戻った」など外食店の不満を例示しつつ、「有力な地位を占めるグルメサイトが特定店舗の評価を落とせば、差別取り扱いとなる恐れがある」とした。

 公取委のアンケートでは、外食店の約3割が表示順位や点数に疑問や不満を感じ、ユーザーの約9割が決定アルゴリズムを知らないサイトがあると答えている。公取委の担当者は、「アルゴリズムが不透明だと、外食店は理由も分からず順位や点数が下がってしまって、不利益を被るのではないかと懸念がつきまとう。ユーザーも順位や点数が決まる背景が分かった上で、グルメサイトを店選びに活用できる方が望ましい」と話す。

 スマートフォンの普及でインターネット予約が広まると、グルメサイトもネット予約に参入。外食店は予約客1人に対し、50~200円程度の送客手数料を払うようになった。予約客にポイントを付与するようになると、こちらも外食店が払う手数料が原資となった。このようにグルメサイトと外食店の契約関係は、変更を重ねてきた。報告書は約11%の外食店が「グルメサイトから一方的な契約内容の変更を受けたことがある」と答えたとし、「十分な意見の聞き取りが望ましい」と注意を促した。

転換点になりうる

 また、複数のグルメサイトを併用する外食店は、予約管理の業務を便利にするため、サイトの予約情報を収集してまとめる「予約台帳サービス」を使うケースが増えている。サービスを利用したことのある外食店の約13%が「サイトから予約管理システムの利用を控えるように求められた」と回答。公取委は、「グルメサイトから接続を遮断されれば、予約管理システム業者は競争上不利になる。また、外食店の予約管理業務の負担が重くなり、多くのグルメサイトと取引がしづらくなる」とし、独占禁止法上の問題(取引妨害)となる恐れがあるとした。

 今回の報告書に対し、関係者からは外食店がグルメサイトに集客を依存する現状の転換点になり得ると評価する声があがった。予約台帳サービスを提供するテーブルチェック(東京・中央)の谷口優CEO(最高経営責任者)は「今回の報告書は広範囲に業界の問題点を取り上げてくれた。飲食店と消費者の間にいる中間業者(グルメサイト)が過剰に利益を得ている状況が、飲食店や消費者に不利益を与える。プラットフォーマーになり得る企業は透明性を高めることが必須だ」と話した。

 別の飲食系ベンチャーは報告書を歓迎しつつ、「ユーザーがグーグルなど検索エンジンを使ってお店を検索したのに、結局グルメサイトの集客実績として積み上がってしまう問題にも触れて欲しかった」と話した。

 今回の報告書は、店選びに欠かせない存在になったグルメサイトが、外食店に対して優越的地位を持ち、独禁法違反になりうると警鐘を鳴らした。ただ、この優越性は、グーグルマップやインスタグラムなどSNSで店探しをするユーザーの増加で、弱まっている。

 報告書では、約85%のユーザーがグーグルなど一般的な検索エンジンを使って、飲食店の情報にたどり着いているとし、「検索エンジン事業者が、グルメサイトの競争者と評価できる場合は、本調査の考え方を適用する余地がある」とし、今後もグルメサイト業界の競争環境を注視するとした。グルメサイトからは「(グーグルなど)検索エンジンが、自社サービスの検索結果を優先表示されると困る」という不安の声も上がっている。

 グルメサイトはグーグルなどの台頭を受けて、インターネット予約した来店客にポイントを付与することで、サイトパワー(集客力)を維持しようと腐心している。外食コンサルティング会社の幹部からは、「ポイントに魅力を感じるユーザーは今後もサイトを利用し続けるから、今回の報告書でサイトの運営が大きく変わることはないだろう。報告書は踏み込みが甘いところも感じる」と冷めた意見もあった。

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