「モスバーガー」を運営するモスフードサービスはハンバーガーなどの価格を、2013年9月29日から10円引き上げた。小麦粉や食用油、肉類など原材料費の高騰を、管理費の削減や物流の効率化などの内部努力による吸収では賄いきれなくなった。
外食産業を取り巻く環境は厳しく、コストアップを価格に転嫁せざるを得なくなっている。
「ビッグマック」と「モスバーガー」地域によっては逆転
外食産業の値上げはまだ続く?(画像は、「モスバーガー」のホームページ)
外食産業の値上げはまだ続く?(画像は、「モスバーガー」のホームページ)
モスフードサービスによると、商品内容の見直しを伴わない値上げは2008年11月以来、約5年ぶり。原材料費の高騰や円安進行で食材・資材の調達費用が大幅に上昇。「こうした傾向は今後も続く見通し」という。
そのため、「モスバーガー」やホットドッグ、「モスライスバーガー」などの定番商品30品目と、「モーニング野菜バーガーセット」など朝食セットメニューの一部、プレミアムアイスコーヒーなどのドリンク類の一部を10円値上げする。価格改定を行うメニューは、定番110品目の40.9%にあたる。
ハンバーガーチェーンでは、すでにマクドナルドがハンバーガーを100円から120円に値上げ。2013年9月13日からは、「ビッグマック」も価格を9段階に細かく刻み、290円~340円から310~390円に値上げしていて、これまで比較的価格が高いとみられていた「モスバーガー」(新価格330円)の価格を地域によっては超える。
また、ロッテリアでも定番のハンバーガーなどを20%引き上げたり、価格の高めの商品を繰り出したりして客単価を引き上げている。
モスフードサービスの指摘のとおり、「値上げ圧力」は当分続きそう。アベノミクスによる円安も、最近は100円台をにらんで膠着。その一方で、原材料の穀物価格が2012年から高止まりし、たとえば輸入小麦は農林水産省が2013年10月から、政府の売り渡し価格を主要銘柄の平均で4.1%引き上げた。
政府から輸入小麦を直接買い入れる製粉会社は、4月の値上げに伴い6~7月、家庭用や業務用小麦粉を値上げしたばかり。2~3か月分の備蓄が見込めるが、在庫がなくなれば再値上げの可能性が高まる。
そうなれば、小麦粉やパン、麺類も値上げ。また、穀物価格が高いと飼料代が上がり、食肉価格にも跳ね返る。ソーセージなどの食肉加工品は価格据え置きで内容量を減らす、「実質値上げ」が進みそうだ。「賃上げ」も新たな「値上げ圧力」
加えて、「賃上げ」も新たな「値上げ圧力」になりそう。ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」や天丼チェーン「てんや」などのロイヤルホールディングスは2014年春から、20歳代の若手社員を対象に月給(基本給)を最大5%増やすことを決めている。優秀な人材の確保が狙いだ。
牛丼チェーンなどではアルバイトの時給を引き上げるケースも出てきている。外食産業は激しい出店競争で慢性的な人手不足にある。
前出のモスフードサービスは、「(人材は)集まりにくい状況ではありますが、深刻な状況ではありません」と話し、「今回の値上げと人材確保とは、まったく関係ありません」という。
とはいえ、人手不足の外食業界で、「賃上げ」がメニュー価格に転嫁されないか、気になるところだ。