円安トレンドは消滅? 2023年は「景気循環」の底となるか(中西文行)

仕事始め早々の1月6日、日銀が消費者物価上昇率の予想を引き上げる検討に入ったという。2022年10月時点で22年度は2.9%、23、24年度は1.6%としたが、22年度を3%台に上方修正するほか、23、24年度も引き上げ、目標の2%に接近すると予想する見通しという。

ただ、1月3日の円相場は一時1ドル=129円台後半と22年6月上旬以来約7カ月ぶりの円高水準をつけた。日銀は12月20日に事実上の利上げを決定。今年、金融緩和をさらに縮小するという見方から、22年10月に32年ぶりの151円台へと進んだ円安トレンドは消滅したようだ。FX投資家は、想定外の急変に大やけどをしただろう。

ナショナルオーストラリア銀行(NAB)のシニアFXストラテジスト、キャトリル氏は「日銀のイールドカーブ・コントロール政策の終了は時間の問題で、日銀はこの政策をいずれやめなくてはならない。これをひとつの主因として、ドル円は23年に120円に向かうとみている」と指摘した。

国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は1月1日の米テレビで「世界の多くにとって、今年はこれまでよりも厳しい年になりそうだ」と見通し、世界経済のマイナス要因について「米国、EU、中国が同時に減速している」と指摘した。IMFは1月中に経済見通しを改定する予定で、23年の世界の成長率を昨年10月時点の2.7%から引き下げるだろう。

さて、22年の大納会式典。岸田首相はNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を手掛けた脚本家の三谷幸喜氏とともにゲストとして登壇し、「北条義時が新時代を切り開いたごとく『成長と分配の好循環』を実現し、新しい日本を切り開いていく決意だ」と表明。「官民一体で個人の証券投資を盛り上げよう」と市場関係者らに呼び掛けた。株式営業では「絶対儲かる」「絶対株価は上がる」など断定的判断の提供は禁句とされている。「盛り上げよう」は微妙な表現に思える。

■株価は1年間で12%下落

新しい資本主義にも「景気循環」が伴う。すなわち景気後退も、株価下落もある。大発会の日経平均株価は2万5716円で終えた。昨年は2万9301円だったから、1年間で12%(約3600円)も下落した。昨年1月に発売された投資月刊誌を見ると、多数の株式評論家が「日経平均株価は年後半高、3万5000円に到達」とした。「株価の景気への先見性」なら23年の経済は厳しい。景気循環の短期循環は約40カ月のキチンサイクルである。23年が景気循環の底となるのか見極めの新春相場、市場売買代金の推移に注目したい。

(中西文行/「ロータス投資研究所」代表)

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