円安急ピッチ 1ドル110円も 「企業にはプラス、家計にはマイナス」

 外国為替市場で円売りが加速している。ここ1カ月で6円以上、18日には1日で1円以上も円安が進んだ。海外で事業を営むグローバル企業には“追い風”となるが、急ピッチな円安が輸入品の値上げにつながれば、消費税増税にあえぐ家計をますます圧迫し、消費意欲を冷やしかねない。物価上昇分を価格転嫁しにくい中小企業でも負の面が意識され始めた。
 「企業にはプラス、家計にはマイナス」
 こう分析するのは、ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎・経済調査室長だ。
 生産の海外移転が進み、円安でも輸出量は伸びにくくなったが、海外の売上高を円換算すれば円安効果が大きく出るからだ。
 非製造業では輸入品の仕入れ価格が膨らむため、基本的には円安は逆風となる。しかし、デフレからの脱却が現実味を帯びる中、コストアップ分を価格転嫁しやすくなっており、サークルKサンクスの竹内修一社長も「将来的には価格転嫁することもあり得る」と打ち明ける。
 日銀の黒田東(はる)彦(ひこ)総裁は16日の記者会見で「日本経済にとって(円安は)マイナスにはならない」との持論を改めて披露している。
 平成24年12月の第2次安倍晋三政権発足をきっかけに、輸出産業を苦しめてきた円高が是正され、企業業績は大きく改善した。
 しかし、東芝の田中久雄社長が「急激に円安に振れると、材料費や燃料費が高騰する」とこぼすように、行き過ぎた円安への警戒感も強まる。円安を“歓迎”してきた自動車業界ですら、「手放しで喜ぶ状況にない」(池史彦・日本自動車工業会会長)と警戒し始めた。
 また、電気・ガス料金は円安などによる原燃料価格の上昇を毎月の料金に自動的に反映する仕組みがあり、日本ガス協会の尾崎裕会長(大阪ガス社長)は18日の記者会見で「消費者の負担が大きくなる」と懸念を示した。SMBC日興証券の丸山義正・シニアエコノミストは「1ドル=110円突破も否定できない」と予想。どこまでの円安を是認するのかが、今後のアベノミクスの焦点になりそうだ。
 (藤原章裕)

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