冷凍ケーキじわじわ存在感 「巣籠もり」が変えた?クリスマス商戦

ケーキの需要が高まるクリスマス商戦で、百貨店やホテルなどが冷凍ケーキの販売に力を入れている。冷凍技術の進化で味が良くなり、有名店の商品が増加。インターネット通信販売による店頭の混雑緩和や、繁忙期の菓子職人の長時間労働の解消も期待できる。24日にケーキ売り場のにぎわいは最高潮に達するが、冷凍ケーキの存在感は高まるか。 【写真特集】サンタ、フィンランドから到着  大丸福岡天神店(福岡市)は、銀座千疋(せんびき)屋の「ベリーのチョコレートケーキ」(5400円)など冷凍の9品をカタログ販売。もともと冷凍ケーキは例年2~3種類だったが、新型コロナウイルス禍の2020年ごろから需要が急増。12月上旬に締め切った今年のケーキ予約注文で冷凍は7%を占めた。  「アンリ・シャルパンティエ」ブランドで洋菓子を展開する「シュゼット・ホールディングス」(兵庫県)は、20年秋にクリスマス用に冷凍ケーキを本格投入。このほか高級ホテルや洋菓子店でも通販冷凍ケーキが増えている。有名ブランドは4000~6000円台と決して安くはないが、各社は「冷凍でも満足いただける品質」と口をそろえる。冷凍はチョコレートやチーズ系が多く、果物は劣化しにくいベリー系の果物が目立つ。クリームは冷凍用に配合を変えてある。  冷凍ケーキの販売を後押ししたのは、新型コロナウイルス禍の巣籠もり需要だ。ネット通販の拡大で、自宅で有名ブランドのケーキを楽しむ人が増えた。シュゼットは冷凍商品に注力し、今年9~11月は前年同時期の2倍以上を販売。「巣籠もり期間中に良さを知ってもらえたのが大きい」(広報担当者)。大丸福岡天神店も「ギフトとして贈る方が増えた。もらうほうも冷凍だから好きな時に食べられる」(広報担当者)という。  実は、外食業界やホテルのビュッフェなどでは以前から冷凍ケーキは普及し、加工を請け負う食品会社は凍結技術や、冷凍に強いレシピ開発を進めてきた。外食企業などからモンブランやチーズケーキを受注する五洋食品産業(福岡県糸島市)は「解凍して食べる時に顧客が求める味となるように計算し、製法や材料の配合を工夫している」と明かす。  洋菓子業界は職人の長時間労働の改善が課題だが、クリスマス時期は徹夜で数百個のケーキを作る店も珍しくない。冷食メーカー側はホテルや洋菓子店に冷凍品採用による省力化、廃棄が出にくい利点をPR。冷凍食品大手の「味の素冷凍」は、解凍に時間がかからない冷凍ケーキも店舗向けに手がける。  手作りの良さや、生クリームの新鮮さを目当てに店頭でクリスマスケーキを求める客は多いが、シュゼットの担当者は「列に並ぶ苦労がなく、店舗がない地域の方も通販で味わえる冷凍ケーキの魅力を今後も高めたい」と話す。【久野洋】

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