冷蔵庫がスッキリしている家庭は約6万円分、お金が増える理由

あなたの家庭の冷蔵庫は食べ切れない食べ物であふれ、やがて傷んでは捨てるということを繰り返してはいないだろうか。余った食べ物、無駄になった食べ物を捨てることは、どこの家庭でもあることだろう。このような食べ物の無駄をなくすだけで、家計にとってはかなりプラスになるのだ。(食品ロス問題専門家、消費生活アドバイザー 井出留美)

家庭の「手取り額」を増やす方法「身近な例」で考えてみる

 まず、「1万円札を6枚もらえる方法」があったら知りたいだろうか?「そんなうまい話があるわけない」と思うかもしれない。

 実は、家庭(世帯)の「手取り額」を6万円以上増やす方法があるのだ。具体的に説明しよう。

「手取り額」を増やすにはどうしたらいいか?その方法は2つ。

「手取り額=収入―支出」なのだから「収入を増やす」、もしくは「支出を減らす」しかない。

 つまり、会社や大学などの組織を例に考えた場合、簡単に売上高が増えないのなら、コストを抑えるということになる。

 家庭の場合も同様である。簡単に収入を増やすことができないのなら、支出を抑えることになる。

 その支出はどこを抑えるか。まずは「無駄な部分」を抑えるのが原則である。そこで、注目すべきは、「食べ切れない食べ物」という無駄である。

 京都市の調査によれば1世帯あたり、1年間に食べ物を6万1000円分捨てているという。

 京都市は人口100万人を超す大都市だが、食べ物のごみも含めた家庭ごみの排出量が、全国の政令指定都市で最も少ない。

 それは京都特有の「しまつする」(無駄なく使い切る)習慣で、ごみの量が圧倒的に少なく抑えられているためだ。

 しかし、そんな京都ですら、1年間に1万円札を6枚も捨てている計算になるのだ。

「しまつ」のこころがない他の地域や家庭であれば、もっと多くなるのだろう。

 ちなみに京都市によれば、6万1000円分の食べ物を捨てるのにかかるコストが4000円。仮にこれが全国で起こっているとすると、11.1兆円の損失だという(京都生ごみスッキリ情報館より)。

「水道の蛇口」を開けっぱなしにしている状態

 日本は貧困層が少ない先進国と認識されている。しかし、そんな日本にもやはり「貧困」はある。

 例えば、毎日、ほぼ学校給食しか食べる物がないという小学生がいる。そんな子にとって、給食がない夏休みは地獄のような日々だ。その結果、夏休みが明けると、その子は痩せてしまっている。このような子どもが、日本でも少なからず存在するのだ。

 そんな子どもたちを支援するために、こども食堂やフードバンクなどの活動が全国にある。これら多くの組織では、食品の寄付を募っているのが実情だ。

 その理由は明らかで、子どもたちのために食べ物が必要だからだ。同じ日本の中で、一方では足りないのに、もう一方ではどんどん捨てているという矛盾がある。

 いわば、水道の蛇口を開けっぱなしにして水(食べ物=お金)を流し、「水が足りない」と言っているようなものだ。

食べ物はタダでは処分できない年間のごみ処理費に2兆円

 そもそも食べ物は、無償で捨てることはできない。税金を使って、焼却処分している。

 今、日本の年間のごみ処理費は、およそ2兆円にのぼっている(環境省による)。食べ物を豚のエサへとリサイクルしている日本フードエコロジーセンターは、この2兆円のうち、8000億円から1兆円が食べ物ごみの処理費だと見積もっている。

 食べ物を作るために世界からお金とエネルギーをかけて輸入し、労働者が毎日働き、決して安くはない税金を納め、そして食べ物を燃やすために税金が使われる。

 日本の1人あたりの食品ロス排出量は、世界で6番目とされている(農林水産省による)。

 2015年9月に国連でSDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)が採択され、「2030年までに世界の食料廃棄を小売と消費レベルで半減する」という数値目標が定められた。

 これを受け、日本政府(環境省)は、2018年6月、「家庭からの食品ロスを2030年までに半減する(2000年度対比)」という数値目標を設定した。そして、2019年5月24日には、日本で食品ロス削減推進法が成立している。

 事業者だけでなく、家庭でも食品ロスを減らすことは急務なのだ。

家庭でできることは「安い」だけで買わないこと

 まず簡単に家庭でできることは、「安いから」という理由だけで食べ物を買わないことだ。

 多くの家庭では買い過ぎた結果、冷蔵庫に入れっぱなしで出さない。つまり、冷蔵庫を「便秘」状態にしないことだ。

 例えば、仕事であれば予算を管理し、価格だけではなく品質も考慮した買い方をしているはずだ。単に「価格が安い」からといって、際限なく買うことはしない。

 なのに、なぜ多くの家庭では、セールやポイント付与、賞味期限切れ食品を破格で売る店、お中元・お歳暮解体セールなどで、食べ物をカゴいっぱいに詰めて買うのだろう。

 仕事では、在庫管理もきっちりしているはずだ。なのに、なぜ家庭では「在庫」がたまり、冷蔵庫がパンパンになるのだろう。

 あるファイナンシャルプランナーいわく、「お金がたまらない家は冷蔵庫や冷凍庫がパンパン」だという。これは、在庫管理や家計管理がしっかりできていない証拠だ。

家庭でできる食費を安くするウラ技

「ちりも積もれば山となる」は本当だ。小さいところに気をつけるだけで、家庭の食費は安くなる。

 例えば、米国での研究結果によれば、「空腹時の買い物は無駄買い金額が64%増える」という。1000円の買い物なら、単純計算で640円増える。だから、買い物には、おなかがすいているときにいかない。おなかをある程度満たしてから行くことで、無駄買いは抑えられる。

 特に家庭で無駄にしがちなのが野菜だ。長ネギなどは、緑の部分からしおれてくる。だから、先に緑の部分を使い切れば、1本100円のネギなら35円分お得になる(緑の部分が全体の3分の1程度と仮定して)。

 筆者は、誕生日(3.11)の東日本大震災を機に、外資系食品企業の管理職を辞めた。その後、しばらくは無職の状態だった。そこで、食べ物を無駄にしないで使い切るというさまざまな工夫をしていた。結果的に、貯金はだんだん増えていった。

 買い物に行って、冷蔵庫を満たすのは満足感がある。でも、買い出しで買ってきた食べ物を順々に使い切っていくのもすがすがしく、達成感がある。

 冷蔵庫や家の戸棚をスッキリさせ、「入れたら出す」の循環をつくることで食費は安くなる。

 その金額は、京都市の調査によれば、1年間に6万1000円分。

 試してみてはどうだろう。

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