「コロナ禍で換気のために窓を開けて寒いのに、防寒着の着用が認められない」「一日中、窓の開放が必要なのか」−。日増しに寒くなる中、学校の換気や防寒着に関する調査依頼が本紙「あなたの特命取材班」に複数届いた。体が冷えて体調不良や集中力の低下につながると懸念する声も強い。
声を寄せた一人、福岡市立中に娘が通う母親は、今冬の防寒具に関する学校のプリントにため息をつく。男子は学生服、女子はセーラー服で、着用できる防寒着は規定のセーターやカーディガン。マフラーや手袋は昇降口で着脱し、規定外のジャンパーやハイネックは認められない−。
例年通りの内容。教室の窓は常に全開で、生徒が閉めると叱る教員もいるため、娘は寒さに耐えながら授業を受けているという。母親は、ぜんそくがある娘を見かねて規定外の服を着るように提案したが、「誰も着ていないし怒られる」。母親は取材班に「先生たちは自由な服装のはず。コロナ禍の今は特に、子どもも暖かな服を着られるようにすべきではないか」と嘆いた。学校側の対応力の乏しさを感じている。
加えて福岡県内の読者からは「窓を開けっぱなしにすると集中力が下がり、体調を壊す危険性もある」として、適切な換気の方法を探ってほしいとの声も届いた。
防寒着と換気に関するこうした疑問に、文部科学省は今月3日改訂の衛生管理マニュアルで答えている。換気のやり方は「常時」を求めつつ、気候の面から難しい場合は「30分に1回以上、少なくとも休み時間ごとの窓全開」と記載。室温の低下に伴う服装については「柔軟な対応」を呼び掛ける。
一方、文科省の担当者は「屋外でも感染したケースはあり、換気が完璧でも感染はあり得る」とも指摘。グループでの話し合いや本の黙読など授業形態は多様であるため、気候や生徒の体調を考慮し「学校現場でその都度判断してもらいたい」と言う。現場での対応が重要、というわけだ。
福岡や北九州、長崎や熊本などの各市は順次、マニュアルの改訂内容を各校に通知しつつ、認める服装については「各校の判断」とする。そのため同じ自治体でも学校ごとに違いがある。福岡市立中の60代男性教員は「窓際の子には特に、規定外の防寒着も着るように呼び掛けている」と、臨機応変に対応していることを紹介する。同市は二酸化炭素濃度を測る機器を今月下旬に各校に配備し、今後の換気の目安にしてもらう考えだ。
森内浩幸長崎大教授(小児感染症)は「換気はウイルスなどの病原体を減らすのに有効。だが着込むことが許されないと寒さで体力や免疫力が落ち、かえって感染症にかかりやすくなる」と強調。学校一律の服装指導については「体の強い弱いは子どもによって異なる。しゃくし定規に防寒着を禁止したり、長時間窓を全開したりするのは間違いだ」と指摘する。 (四宮淳平、下崎千加)