4月に札幌市である主要7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合で、議長国日本がとりまとめる共同声明の「たたき台」が判明した。東京電力福島第一原発の処理水問題について「放出に向けた透明性のあるプロセスを歓迎する」、除染土を再利用する計画の「進捗(しんちょく)を歓迎する」とする表現を盛り込もうと、各国と調整している。いずれも国内で慎重論が根強い問題だが、主要国の支持を得る狙いがあるとみられる。 【インフォ】処理水の海洋放出のイメージ。地元では理解が広がらないばかりか、「分断」も生まれつつある こうした内容は、1~3日に都内であった実務者レベルの会合などで各国代表に説明された。政府関係者は「G7で結束できれば安全性をアピールできる」。ただ、日本固有の問題を共同声明に盛り込むことへの疑問のほか、ドイツなど原発に慎重な国もあり、別の関係者は「『歓迎』とまで入れられるかはまだ見えない」という。これまで、G7の共同声明に処理水放出や除染土再利用を後押しする文言が入ったことはない。 福島第一原発の汚染水は溶け落ちた核燃料を冷やす過程などで生じる。浄化処理を進めて敷地内のタンクで保管するが、東電によると今夏から秋ごろにも満杯になる見通し。同社は多核種除去設備(ALPS)で62種類の放射性物質を国の基準値以下の濃度に下げる。ALPSで取りのぞけないトリチウムは法定基準の40分の1未満まで薄める。処理した水は原発1キロ沖合で放出する計画で、今年春から夏ごろに始める方針だ。