芸歴33年。現在54歳の出川哲朗による突然の大ブレイクを、いったい誰が予想できたであろうか? 女性誌「an・an」(マガジンハウス)の「嫌いな男ランキング」では絶対的エースとしてすでに殿堂入り。リアクション芸人として、バラエティ界では長らく“飛び道具”扱いだった彼が、気づけばCM契約本数11社に加えてレギュラーの冠番組を持つなど、ここにきてまさかの大ブレイクなのである。いったいなぜ、時代は出川哲朗を求めているのか? バラエティ界の第一線で活躍する大御所放送作家は次のように語る。
「出川さんの大ブレイクは、2007年から始まった『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)の影響がもっとも大きいでしょうね。番組に“ご意見番”として呼ばれるようになってから、『出川哲郎はじめてのおつかい』や『パパラッチ出川』などのロケ企画が軒並みヒット作となり、出川さんが海外で追い込まれたときに繰り出す、つたなすぎる英会話“出川イングリッシュ”にハマる子どもたちが続出。もともと『イッテQ!』は『電波少年』の製作に携わっていたスタッフたちによってつくられているので、追い込まれた芸人を描くのが非常にうまい。若いときに『電波少年』世代だった今の40代とその子ども世代が、日曜日の夜に親子そろって見られるコンテンツとして、非常によくできています。出川さんはそんな高視聴率番組の花形なので、広告代理店がほっとかないのもうなずけますよ」
10月8日にオンエアされた『しゃべくり007 2時間SP』(日本テレビ系)でも、子どもに大人気のユーチューバーであるHIKAKINと同列扱いのスペシャルゲストとして登場。名実共に、本物の売れっ子芸人としての“貫禄”を見せつけたのである。
「この特番で、人気ユーチューバーHIKAKINと同列扱いされたことがまさに象徴してますが、出川さんの人気は、わかりやすいリアクション芸や顔芸が好まれるYouTube人気とも直結します。今の若手芸人も、松本人志的な“センスある面白さ”を追求しても勝ち目はないとわかっているため、出川さんのような、“誰からもイジられる芸人”を目指す人が多くなってますね。
HIKAKINがCMタレントとしても人気があるのと同様、出川さんも、人気の間口が広いからこそこれだけのCM本数を獲得できているんだと思います。とにかくテレビ業界では、CMに何本出てるのかが絶対的な指標。スタッフ受けがいいタレントとか劇場でウケてる芸人とか、そういうのは“数値化”しづらく、本当のブレイクではない。その意味において、CM出演数の多い出川さんは、わかりやすく、今もっともブレイクしている芸人といえるでしょう」(前出の放送作家)
“ボロ”が出るようなトーク番組MCなどはひかえるべき!?
出川哲朗出演のCMといえば、今年1月まで大量にオンエアされていた、仮想通貨取引所「コインチェック」社のものが記憶に新しい。当時はまだ、出川のキャスティングについては“大抜擢”感が強かったが、1月26日に仮想通貨「ネム」約580億円分がコインチェック社から流出したことによって、やおら社会的な大騒動に。出川出演のCMも即座に中止さられたものの、このコインチェック社のCMを見て仮想通貨取引に参入した人を「出川組」と呼ぶようになった。つまり、未曽有の流出騒動でCMこそ葬り去られたものの、仮想通貨界に「出川哲朗」の名前を刻んでみせたのである。大手広告代理店の関係者は次のように語る。
「あのCMのインパクトは本当に衝撃的でした。まさか、出川さんの名前が仮想通貨業界でいまだに使われるような事態になるなんて思ってもみませんでしたよ。コインチェック社のCMに出ているタイミングでのあの流出騒動というのは『タレントとして不運』などという声もありましたが、世間ではおおむね『出川がかわいそう』『出川組がんばれ』と、出川さんに同情する声が圧倒的。これも、出川さんのタレント性がなせるワザだと思います。
実際、コインチェック騒動以降も、出川さんのCM露出は増えてますからね。『トーク番組のMCをやりたい』といつも公言されてますが、そういった仕事に本格的に手を出すと、『番組を回せないポンコツ芸人』だとボロが出ちゃうので(笑)、今ぐらいの活動でキープしてもらえるのが一番ありがたい。芸人としての“化けの皮”がはがれない程度の状態でいてもらえれば、今後もしばらくは、大人気CMタレントとしては安泰ではないでしょうか」
イジられ、同情される芸人であり続ければ、出川哲朗の人気は今後も安泰の様子。この大ブレイクで調子に乗って、真の意味で芸人の資質が問われそうな新番組に手を出すなど、今の出川哲朗にはご法度のようだ。