出帆400年の節目、朗報 遣欧使節資料が記憶遺産に

仙台市博物館所蔵の国宝が、世界の宝として認められた。19日に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の記憶遺産への登録が発表された「慶長遣欧使節関係資料」。使節団派遣から400年の節目の朗報に地元は歓喜し、東日本大震災の被災地の関係者は「復興の大きな励みとなる」と歓迎した。
◎子孫の支倉常隆さん「先祖誇りに思う」
 登録は国内2例目の快挙。「あらためて先祖を誇りに思う。これまで保存に関わった全ての人に感謝したい」。使節団を率いた支倉常長の子孫に当たる支倉常隆さん(66)=仙台市若林区=は感慨深げに話した。
 常隆さんは6月中旬、日本スペイン交流400周年事業に合わせ、使節団が寄港したコリア・デル・リオなどを家族とともに訪ね、地元民と交流した。公式訪問中だった皇太子さまとマドリードで対面し、握手を交わす機会もあった。
 「これまでにないぐらい『支倉』の名を背負う重みを感じている。後世にしっかりと歴史を伝えていきたい」と話した。
 宮城県石巻市の宮城県慶長使節船ミュージアム(サン・ファン館)の浜田直嗣館長は、仙台市博物館の学芸員として長年、資料管理に携わった。「世界的な視野で評価してもらえたことが本当にうれしい。被災地にとって明るいニュースだ」と声を弾ませた。
 使節団は、仙台藩に大きな被害を及ぼした慶長三陸津波(1611年)の2年後、海外雄飛を夢見た伊達政宗の命を受け、大海原に帆を張った。
 津波の被害を受けるなどして閉館中のサン・ファン館は、ことし秋の再開を目指す。浜田館長は「使節団の姿は、震災からの復興に向かう現在の東北と重なる。遺産登録を機に、使節団の気概をわれわれも共有したい」と語った。
 バウティスタ号の出帆400年に関連し、石巻市や仙台市では記念行事が予定されている。村井嘉浩知事は「節目の年に偉業が評価され、大変喜ばしい。記念事業を広くPRしていきたい」とコメントした。
◎「偉人の功績、再評価」/仙台市博物館で3点特別公開
 仙台市博物館は19日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の記憶遺産登録が決まった「慶長遣欧使節関係資料」全3点の特別公開を始めた。歴史ファンが足を運び、貴重な資料を興味深げに見入った。
 公開したのは、使節団を率いた支倉常長の油彩画(縦約80センチ、横約65センチ)と、常長が藩主伊達政宗からの親書を手渡したローマ法王パウロ5世の油彩画(縦約75センチ、横約60センチ)、ローマ市議会が常長に市民権を与えたことを示す証書(縦約70センチ、横約90センチ)。
 同館は通常、いずれも複製を展示している。記憶遺産への登録決定を受け、急きょ実物の公開を決めた。
 ニュースで特別公開を知り、駆け付けたという青葉区の保育園経営田崎耕太郎さん(44)は「一級品を近くで見ることができ、感慨深い。今回の登録が、使節団の再評価につながってほしい」と話した。
 遠藤俊行館長は「歴史ファンだけでなく幅広い層に見てもらい、歴史を変えた偉人の功績に思いをはせてほしい」と語った。
 特別公開は30日まで。観覧料は大人400円、高校生200円。小中学生100円。連絡先は市博物館022(225)2557。

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