出版物のインキ業界、材料・生産力・流通力不足で「非常事態」を宣言

印刷インキ工業連合会は2011年3月25日、東日本大地震(東北地方太平洋沖地震)における震災で、各種インキ製品について生産・出荷に大規模な遅延、滞りなどが生じる可能性があるとし、「非常事態」を宣言した。「印刷インキ」「オフセットインキ」「グラビアインキ」「新聞インキ」それぞれについてほぼ同じ状況が発生しており、事態も同様の状況にあるとしている(【発表リリース、PDF】)。
リリースでは今震災によって「生産工場の火災や製品倉庫の荷崩れなどが関連企業で多数発生」し「印刷インキの主要原材料の調達が厳しい状態にある」こと、さらに「重油やLPGなどの燃料不足が深刻化している」「計画停電の実施で生産体制の根本的な見直しが必要」「製品の出荷においても輸送用トラックの燃料不足が続いている」ことから、製品の納品遅れ・滞りの発生、製品や原材料在庫が切れる可能性を示唆している。
特にそれぞれの専用インキで必要となる化学原材料の入手が難しい状態にあり、資材調達の環境がいつ改善されるのか見通しが立たないとし現状を伝えると共に、各種印刷物の作成においては「特段のご配慮」(印刷インキ、グラビアインキ)「色数やサイズ、インキ使用量等々に対しまして特段のご配慮」(オフセットインキ)「色数や頁数、インキ使用量の抑制につきまして特段のご配慮」(新聞インキ)をするよう訴えている。
個々のインキの状況に関する言い回しを詳しくチェックすると、
・印刷インキ……資材調達環境改善について「まったく見通しが立たない」
・オフセットインキ……資材調達が入手困難、「色数やサイズ、インキ使用量」で利用時に配慮を求めている
・グラビアインキ……資材調達環境改善について「まったく見通しが立たない」
・新聞インキ……資材調達環境改善について「まったく見通しが立たない」、数週間から1か月後には製品や原料在庫が途切れる可能性がある、色数や
頁数・インキ使用量の抑制に配慮を求めている
とあり、特段「新聞インキ」が危機的状況にあることがうかがえる。
製品倉庫の荷崩れは現在も状況回復作業を行っているはずだが、生産工場の復興はこれからの話となる。燃料不足は回復傾向にあるが計画停電は今日明日に終わるものでは無く、夏以降も続く可能性は否定できない。今件が数日・数週間の話では無く、もう少し長期間における状況となることは容易に想像できる。
またインキ同様印刷業界と深い関係にある製紙業界でも状況は似たようなもので、例えば日本製紙では【最新のリリース(3月25日付、PDF)】の中で、主要5工場のうち3工場までが全停止状態にあると説明しており、製紙業界全体としての生産量も著しく落ちていることは容易に想像できる。
材料不足の観点からも、出版業界は来年度(4月以降)、何かとこれまで対面したことの無い状況と向かい合う必要に迫られるに違いない。

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