【ふるさと便り】
約60年ぶりの「平成の大遷宮」で改修工事中の出雲大社(島根県出雲市大社町)で28日、本殿(国宝)の大屋根を飾る千木(ちぎ)の用材を氏子たちが境内に届ける千木奉曳(ほうえい)式が営まれた。
X形の千木は神社の象徴。本殿屋根に南北2基あり、今回の遷宮では傷みの激しい南側を新調し、北側は修理して再利用する。新しい千木は、東日本大震災に見舞われた岩手県で伐採された樹齢約300年のアカマツ2本。いずれも長さ8・32メートル、重さ600キロ。
この日は氏子ら約800人が旧JR大社駅前広場に集合。千木をトラック2台に載せ、行衣(ぎょうい)姿の氏子500人が曳(ひ)き手となり、音頭長の池内芳弘さん(66)らが歌う「木遣(きや)り唄」を合図に綱を引きながら境内までの約2キロを歩いた。
曳き手の一人で同町杵築東のすし店経営、服部晃治さん(53)は「曳き手に選ばれたことに誇りを感じます」と汗びっしょりで語った。
境内・銅鳥居前で氏子らを出迎えた千家尊佑宮司は「東日本大震災で『がんばろう日本』と日本がひとつになっている今、岩手県産のマツ材が使われることにご神縁を感じます。悠久なる祈りと国民の励ましになればうれしい」と感謝した。
千木は銅板に包んで組み合わせ、年末には本殿大屋根に上げられ、平成25年5月10日のご神体を遷(うつ)す「本殿遷座祭」を迎える。