初売り、コロナで振るわず 事前予約の福袋は好評

東北の百貨店や大型商業施設が今年の初売りの結果をまとめた。新型コロナウイルス下で客足は遠のき、売り上げは軒並み落ち込んだ。一方、感染防止に向けて導入した福袋の事前予約は好評。例年のような混雑がなかったことで、行列を敬遠して初売りに足を運んでこなかった客層にも受け入れられた。

 藤崎は初売り期間を2~6日の5日間に延ばしたが、売上高は前年同期比25・5%減。年内で締め切った予約福袋は約7500個が売れた。食品やリビング雑貨、調理器具といった巣ごもり需要を取り込んだ福袋が人気だった。
 仙台市青葉区の本館の客数は38・5%減。2日と食品福袋の販売を始めた4日、開店前の行列は昨年の10分の1程度の約1000人に抑えられた。客からは「早朝に並ばなくても福袋を買うことができた」と喜ぶ声が聞かれたという。
 同区の仙台三越は、2日の売り上げは半減、3日は4割減だった。予約福袋の数を昨年の5倍に増やし、4日以降に受け取れるようにして混雑を緩和させた。整理券を導入し、午後も客が増えた。例年通り食品や紳士雑貨の福袋に人気が集まった。
 仙台駅前のイービーンズは2、3日の売上高、客数ともに3割減。「家族連れやライトユーザーの数が減った」(担当者)一方、各テナントの常連客が支え、客単価は2割上がった。
 同駅前の仙台パルコは2、3日の売上高、客数ともに半減。福袋をウェブ販売したテナントは店頭商品に注力し上積みにつなげた。
 さくら野百貨店(青森市)の1~3日の売上高は38・7%減。青森本店、弘前店の客数は半減した。川徳(盛岡市)は2日の売上高は4割減。福袋の数を昨年の4割に絞った上、全て予約制とした。担当者は「売り上げは厳しいが、安全が最優先だ」と強調した。
 西武秋田店(秋田市)は初売り期間を昨年12月26日~1月11日とした結果、売上高は昨年の初売り期間(1月1~3日)に比べて1割減。うすい百貨店(郡山市)は2~4日の売上高が26・5%減、客は32・3%減だった。昨年にアパレルの撤退が相次ぎ、福袋の販売数が2割減った。
 イオンリテール東北事業本部(仙台市)によると、東北のイオン各店の1~3日の食品を除く売上高は3割減。仙台市以外では昨年12月下旬から福袋の販売を始め、年末は1割超伸びた。食品を扱うイオン東北(秋田市)は昨年末を含めると前年同期間の売上高を上回った。

福袋マンネリ化の声も 「中身見せないと売れない」

 新型コロナウイルス下で初めて迎えた今年の初売り。人出が減っただけでなく、例年の売り場を沸かせた消費熱もすっかり冷めたようだった。商品をじっくり吟味する客が多く、人気の福袋でさえ売れ残った。各店はアフターコロナ時代の初売りを見据え、消費喚起策の練り直しを迫られている。
 藤崎で毎年人気のハンカチ福袋(1000円)が今年は完売しなかった。担当者は「中身を見せないと売れない。5枚のうち1枚でも要らないものがあると買ってもらえなかった」。
 小野寺宣克専務は「福袋は本来、縁起物として利益還元の意味合いがあった。今は目的買いの需要が増え、むしろ購入特典の景品を充実させた方が時代に合う」と語り、福袋の在り方を見直す考えを明かした。
 川徳の売り場には、スマートフォンで商品の相場を検索する客の姿もあったという。担当者は「ゆったり買い物ができるため、いつもより選んでいるようだった」と振り返る。
 うすい百貨店の担当者は「福袋はマンネリ化している」ときっぱり。「福袋に限らず、お客さまに楽しんでもらえるような特別限定商品を取り入れ、独自色を出していきたい」と意気込む。
 イービーンズは人気アニメのトレーディングカードが入った100万円の福袋3個が完売した。佐藤勝彦館長は「高額でも中身がきっちり分かる方が売れる。消費者の価値観は変化し、昔ながらの『くじ引き』のような福袋は受け入れられにくい」と話した。
 「ファストファッションが台頭してから、特に衣料品の福袋への目が厳しい」と指摘するのは仙台三越の担当者。「失敗のない」とされる食品、固定客がいるブランドの福袋は依然として人気が高い。担当者は「福袋は仙台初売りの象徴。伝統を守りながら関心を高められるようにしたい」と付け加えた。

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