初夏にポン酢が売れる東北の謎 旬の味覚との深い関係とは?

 「東北の人は冬の鍋より、初夏のカツオにポン酢をかけることが多い」。仙台市若林区の市中央卸売市場で5月中旬にあった初ガツオのPRイベントを取材した際、「味ぽん」を販売するミツカンの担当者から聞いたのが冒頭のお話。西日本とはポン酢の売れ方に違いがあるんだとか。会社に戻った後も気になって、後日改めて、ミツカン東北支店(泉区)を訪ねました。そこには意外な理由が―。(編集局コンテンツセンター・三浦夏子)

7月は全国を上回る

 取材に応じてくれたのは横山光之支店長です。2022年3月~23年2月の売り上げ推移に関するミツカン提供の資料に目を落とすと、東北では1人当たりのポン酢の月別購入量が、年間を通じて全国平均を下回っているものの、「購入率」(店舗や電子商取引=EC=サイトを訪問した人のうち、商品を購入した人の割合)は7月だけ全国を上回っているのが見て取れます。実際、ポン酢の購入量は「6、7月がボリューム月」(担当者)ということです。

「のっけ盛り」のCMが転機

 どうして東北と全国とではポン酢の購買行動に違いがあるのでしょうか。横山支店長に疑問を投げかけると、あるテレビCMの存在を教えてくれました。

 それは「かつおと野菜ののっけ盛り」のCM。人気俳優を起用して2000年に放映が始まり、カツオのたたきに新タマネギや薬味を載せ、味ぽんをかけるレシピを紹介する内容です。

カツオの支出額と符号

 生鮮カツオの水揚げが多い東北の人々にとって、当時カツオは表面をあぶる「たたき」ではなくショウガを添えて「刺し身」で食べるのが一般的でした。たたきとして食べる「のっけ盛り」は、東北の人々に新鮮に映ったようです。

 「タンパク質豊富なカツオと野菜をおいしく味わうことができ、健康的ということで、東北に住む人々の心を強くつかんだのではないでしょうか」と横山支店長。CM効果でポン酢の売り上げが伸び、認知度も着実に高まっていったと分析します。

 「カツオと一緒に食べられている説」を裏付けるデータもあります。総務省の家計調査で1世帯当たりのカツオの月別支出額をチェックすると、22年の東北は6月が年間トップの322・8円で、7月が年間2位の238・8円。東北でポン酢購入量が多い6、7月と見事に符合します。

冬場には購入率が落ち込む

 温かい地域で発酵しやすい酢を使った調味料や料理は、近畿地方を中心とする西日本で発達してきた歴史があります。水炊きやフグ料理などぽん酢を合わせるメニューが多いのも、長年にわたり培ってきた食文化があるからこそ。西日本では定番のポン酢とかんきつ系の風味が強いポン酢の2種類を使い分ける家庭も多いそうです。

 一方、東北ではみそや酒など低温で発酵が進む調味料がよく使われます。「東北ではスープにしょうゆやみそなどの味がついた鍋が根強く人気。他のエリアに比べるとポン酢を鍋に合わせる人が少ない」と横山支店長。伝統的な食文化を反映した鍋の好みが影響しているからか、東北のポン酢購入率は全国が最も高くなる冬場に落ち込むということです。

 ミツカンは旬のカツオをポン酢で味わう「かつおののっけ盛り」を改めてPRしようと、9年ぶりとなるテレビCMを今月3日から流しています。東北6県限定です。横山支店長は「若い世代の中にはCMを知らない人も多い。味ぽんが東

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