初夏の食卓にショック 海水温上昇でホヤ壊滅か 宮城・南三陸

旬の季節を迎えている宮城県南三陸町特産のホヤが、今季は海水温の上昇により壊滅的な状況になっている。本来は初夏から収穫最盛期だが、海中では多くのホヤが死滅し、残ったホヤも深刻な成育不良に見舞われた。生産者は「打つ手がない」と先行きに不安を募らせている。(気仙沼総局南三陸分室・高橋一樹)

嘆く生産者「50年養殖してきて、こんなにひどいのは初めて」

 南三陸町の志津川湾で11日早朝、同町戸倉の養殖業村岡賢一さん(74)が引き揚げるホヤの養殖ロープは、どれも赤茶けた海藻や小さな貝に覆われていた。ロープにこんもり付いているはずの鮮やかなホヤの姿はほとんど見えない。

 例年はロープ1本の収穫でかご3、4個がいっぱいになるが、この日は15本引き揚げて一つにも満たなかった。サイズも通常の半分以下。市場への水揚げは断念せざるを得なかった。

 「売り物にならないホヤしか付いていない。50年養殖してきたが、ここまでひどい状態は初めてだ」。県漁協志津川支所戸倉出張所のホヤ部会長を務める村岡さんは嘆く。ホヤは種を付けて約3年で収穫するが、成育途上のホヤも十分に育っておらず来季も見通しは厳しいという。

 町地方卸売市場では、例年なら5月の大型連休ごろからホヤの水揚げで活気づくが、今年は6月中旬になってもほとんど水揚げされていない。担当者は「志津川湾全体でホヤが腐ったり、身入りが悪かったりするようだ」と厳しい状況を説明する。

 県水産技術総合センター(石巻市)によると、ホヤの成長に適した夏場の海水温は約12~20度で、24度を超えると成育が悪くなる。昨年、南三陸町歌津の観測地点では8月上旬から2カ月近く24度を超え、26度に達した日もあった。成育不良は南三陸以外の海域にも広がっているとみられる。

 担当者は「黒潮の蛇行による海水中の栄養不足の影響も考えられるが、地域や水深による傾向が見えないところもある。まずは海水温が下がることを期待するしかない」と話す。

 県産ホヤを巡っては、東京電力福島第1原発事故後に韓国が輸入を停止。東電は2014年から損失分の補償を続けてきたが、昨年11月末で終了した。苦境にあえぐ生産者に不漁が追い打ちをかけている。

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