新型コロナウイルス感染拡大を受け、東北の神社仏閣が初詣の密集回避に知恵を絞っている。お守りや縁起物の授与を早めて正月三が日に集中する人出を分散させようとしているほか、参拝時の接触を防ぐ対策を講じる寺社もある。神職らは「例年通りでは『密』が避けられない。参拝客が安心してコロナ禍の収束を祈れるように対応したい」と口をそろえる。
鶴岡市の荘内神社は、出羽三山神社、善宝寺と共に山伏や龍神、みこらが登場する絵文字「ピクトグラム」を3種類作って境内に掲示し、「間隔を空けて並ぶ」「大きな声を出さない」などの呼び掛けをする。
正月に始めるお守りや縁起物の頒布は今月1日に前倒しした。中旬からは郵送でも対応できるようにする方針。神社で頒布する際は現物を置かずに一覧表から選んでもらう。おみくじも筒を使わずに台から選ぶ方式にする。
石原和香子権禰宜(ごんねぎ)(34)は「コロナ禍で初めての正月に備えるため、夏ごろから対策会議を毎月開いて安全安心な初詣を考えてきた」と明かす。毎年三が日は駐車場や境内の様子をインターネット中継しているが、来年は1月7日まで延長することも決めた。
接待を伴う飲食店でクラスター(感染者集団)が発生した弘前市。例年、三が日に約7万人が参拝に訪れる岩木山神社は消毒液を設置し、手水舎からひしゃくを撤去した。祈祷(きとう)の申し込みは郵送で受け付ける。
9月中旬の伝統行事「お山参詣」は団体参拝の自粛を求めた。初詣に向けて分散参拝をホームページで呼び掛けたり、間隔を保てるよう参拝順路を変更したりすることを検討している。
岩手県平泉町の世界遺産・毛越寺は、大みそか夜からの浄土庭園のライトアップを中止する。例年は一般参加を受け付けていた除夜の鐘も僧侶のみで突く。
元朝参りでの過密を避けるため、縁起物の販売は午前2時でいったん休止。お守りやお札も含め午前8時に販売を再開する。寺の担当者は「これ以上の対策はテレビや新聞に広告を出し、参拝の注意喚起を促すくらいしかない」と語る。
約50万人の初詣客を見込む塩釜市の塩釜神社は、来年2月の節分までの分散参拝を呼び掛ける。縁起物やお守りの授与は約3週間早い今月1日に開始。授与所の窓口には飛沫(ひまつ)対策の透明シートなどを設置した。
拝殿前は間隔を空けて並ぶようテープで線引きをし、祈祷の際は昇殿人数を制限する。来年の干支(えと)にちなんで混雑が予想される「なで牛」には、触れないよう促す注意書きを置いた。
神社は手水舎をひしゃくを使わない流水式にするなど対策を重ねてきた。小野道教禰宜(58)は「三が日の初詣客数はふたを開けてみないと分からない。神社としては混み合う時期を避けて参拝いただくようお願いしたい」と話した。