かつては「昭和」「おじさんっぽい」などのイメージがあった日本酒。最近では、若い女性向けの日本酒カクテルなど新しい飲み方も登場し、老若男女に親しまれている。酒どころの福島県会津地方で生まれ育った記者が、利き酒を体験しながら日本酒の今を探ってみた。
(報道部・江川史織)
<6種類一致競う>
テーブルの上に、カタカナとアルファベットの紙が張られた四合瓶が6本ずつ。参加者は純米酒などの日本酒を一つずつ試飲し、香りや味など特徴をメモしていく。会場内は私語厳禁。グラスをテーブルに置く音が響き、緊張感が漂う。
7月15日に仙台市青葉区の宮城県酒造組合であった県利き酒選手権大会の県大会。参加総数142人の中から、予選大会(6月)を勝ち抜いた20~60代の男女27人が参加した。
6種類を飲んで自分の好きな順位を決め、2回目も同じ順位で並べられるかを競う。「嗜好(しこう)順位法」と呼ばれ、一致する順位が多いほど高得点となる。県大会では100点満点が4人現れ、次点2人を含む計6人がプレーオフに進んだ。
激戦を制したのは仙台市青葉区の主婦安藤貴子さん(47)。「この酒は煮物に合うかな、などと料理を思い浮かべながら6種類の酒を覚えていった」と話す。参加7回目で初の優勝だ。
利き酒では口に含んだ酒を吐き出すのが普通だが、安藤さんは全て飲み込む。「喉元から落ちていく感覚も確かめた」。頬を赤らめて笑った。
安藤さんと準優勝者は10月に東京の全国大会に出場する。一昨年は個人の部で宮城代表が全国を制覇。県酒造組合の佐浦弘一会長は「酒どころの宮城は利き酒のレベルが高い」と語る。「近年は若い世代の参加も増えており、日本酒への関心の高まりを感じる」
<女性1人で来店>
利き酒とまではいかなくても、気軽に日本酒を楽しめる店が増えている。JR仙台駅に4月オープンした「日本酒バル ぷらっと」は県内25蔵の酒をそろえるほか、日本酒にレモンシロップを混ぜたり、梅酒で割るなどさまざまな日本酒カクテルを提供する。
同店を運営する宮城県松島町の酒販店「むとう屋」の佐々木憲作専務は「昼間に1人で来店し、読書をしながらお酒を楽しむ女性もいる」と話す。型にはまらない自由な飲み方が最近の傾向だ。
酒好きを自認する記者も利き酒選手権を体験させてもらったが、結果は6種類全ての順位を外す悲惨なものだった。日本酒の奥深さを知るには、まだまだ飲みが足りないようだ。
[メモ]利き酒選手権大会は全国、宮城県ともに1981年に始まり、今年で36回目。全国大会には都道府県の代表2人が参加する個人の部と、その2人の合計点で競う団体の部がある。宮城はこれまで個人、団体とも2回ずつ優勝している。