衣料通販ZOZO創業者の前沢友作氏(46)とアシスタント役の平野陽三氏(36)の2人が8日、ロシアの宇宙船「ソユーズ」で国際宇宙ステーション(ISS)滞在に向かった。日本の民間人のISS滞在は初めてとなる。滞在は12日間の予定。今回の宇宙飛行のきっかけは約7年前、宇宙旅行の代理店、米スペース・アドベンチャーズから前沢氏にオファーがあったことだった。その背景には、多額の費用が必要な宇宙開発をめぐる経済事情がある。 【動画】前沢友作氏搭乗の宇宙船、打ち上げ 前沢氏は今回の宇宙飛行について、「誘いを受けるまでは宇宙に行けると知らなかった。知ってからは、好奇心と挑戦心が止まらなくなった」と明かしている。 前沢氏のような民間人が初めてISSに滞在したのは2001年のことだ。米国の実業家が約20億円を同社に支払い、ソユーズ宇宙船で地球と宇宙を往復した。09年までに大富豪7人がソユーズに搭乗してISSへ行き、滞在した。 そんな中、高コスト体質だった米国のスペースシャトルが11年を最後に引退。ISSに宇宙飛行士を運べる宇宙船は世界でソユーズだけになり、民間人をソユーズに乗せる余裕がなくなってISSへの宇宙旅行は10年以降、途絶えていた。 一方、20年に米宇宙企業スペースXが有人宇宙船クルードラゴンの開発・運用に成功。米国は再び自力で飛行士をISSに送る手段を手にした。ロシアは米国人飛行士1人当たり約90億円でソユーズに乗せていたが、その分の収入を失うことになった。 こうした現状を踏まえ、宇宙ビジネスコンサルタントの大貫美鈴さんは「米国の有人機の復活によって、ロシアが独占していた市場にドラマチックな変化が始まった。外貨を得るため、ロシアは積極的に民間人ミッションを受け入れようとしている」と解説する。 今年10月には、3人乗りのソユーズにロシア人女優と監督が搭乗し、ISSで映画を撮影した。01~09年にソユーズに搭乗した民間人は1人ずつだったが、今回の前沢氏のケースを含め、民間人が2人ずつ搭乗するのは従来からすれば異例だ。ロシアは今後、民間人がISSの船外で宇宙遊泳できることをセールスポイントにしようともしている。 ISSの運用には多額の経費が必要で、ロシアだけでなく参加する各国は民間活用の方策を模索している。米国でも、クルードラゴンを利用してISSに滞在する宇宙旅行が来年から始まる。 前沢氏は今回の宇宙飛行のために2人分、計100億円程度を支払ったとされる。米国でも実業家らの宇宙旅行が相次ぐ。大貫さんは「億万長者の宇宙旅行を身近に感じられない人もいるかもしれないが、人類の新たな宇宙利用の形を示し、フロンティアを開拓していると言える。結果的に多くの人に宇宙への扉が開かれていく道筋になる」とその意義を説明する。 前沢氏の宇宙飛行には、宇宙飛行士を職業としている「プロ」の飛行士らも関心を寄せる。 前沢氏らは今回の飛行を前にロシアで約100日間にわたる訓練をこなしたが、職業宇宙飛行士の訓練期間は数年に及び、さらに過酷で長いという違いがある。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の大西卓哉飛行士(45)は「船外活動でISSを修理したり、ロボットアームを操作したり、職業宇宙飛行士にしかできない仕事もたくさんある。これからは職業宇宙飛行士と民間の飛行士が互いに共存しながら、そ